「ミーハーなバカ女」と罵られても推しは推し!毒舌アイドルとの不器用すぎる同居ラブ【書評】

マンガ

公開日:2025/8/24

©ただまなみ/アムコミ/祥伝社 FEEL COMICS
©ただまなみ/アムコミ/祥伝社 FEEL COMICS

国民的アイドルが弟になったら』(ただまなみ/アムコミ/FEEL COMICS)は、電子コミック累計630万DLを突破した話題作。“推しが弟になる”という、まるでファンタジーのような出来事から始まる本作だが、その夢は決して甘くはない。

 主人公・涼夏が夢中になっているのは、人気アイドルグループShineのメンバー・神谷陽生。テレビの中でキラキラと輝く“推し”だった彼が、父の再婚によって突然“弟”になる。ところが現実の彼は、ファンを「上っ面に騙されるバカ女」と言い放つ、口も態度も最悪な俺様男子。涼夏のことを「ミーハーなバカ女」と呼ぶ推しとの同居生活は、夢どころか試練の連続だ。

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 それでも涼夏は、簡単に彼への想いを断ち切ることができない。ファンであることを隠して日常を過ごすが、あふれる感情はふとした瞬間に言動ににじみ出てしまう。そして、アイドルとして彼を見ていた頃には気づけなかった“裏の顔”が、弟という立場だからこそ少しずつ見えてくる。

 仕事に追われ、理不尽なプレッシャーにさらされながらも全力で向き合う姿。再婚という家庭の変化に戸惑いながらも、必死に受け入れようとする不器用な優しさ。完璧に見えていた“推し”が、実は悩みや葛藤を抱えた、同じ高校生だったという現実。そんな彼の人間らしさに触れるうちに、涼夏の想いもまた、ただの「推しへの愛」から少しずつ変化していく。

 意地悪な態度ばかりかと思えば、時折見せる優しさに胸がときめく。陽生の誕生日のためにはりきって準備をするものの空振りに終わるどころか、ナンパ男に絡まれ不運続きの涼夏を助けに来てくれるエピソードには心を掴まれた。

 夢のようでいて、リアルに胸を刺す青春ラブストーリーは、推しをただ“見つめる”のではなく、“知ること”や“寄り添うこと”の大切さを教えてくれる。これから、姉弟という立場で、同じ屋根の下に暮らすふたりの関係がどう変化していくのか。年頃の男女として、揺れ動く空気感や感情の行方にも注目したい。アイドルに恋をしたことのあるすべての人に届けたい、夢キュンでほろ苦い“リアル”に触れる一冊だ。

文=ネゴト / すずかん

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