閑静な住宅地で起こった悪質すぎる嫌がらせ。犯人は誰? ご近所トラブルを描こうと思った理由【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/8/25

 子どもが小学校に入学するタイミングで郊外の住宅地に家を買ったとある家庭。主人公・平川里奈は、近所のママ友や町内会の人たちに溶け込み、順調なスタートを切っていた。しかしある日、公園で自分の子どもを激しく叱責する女性を咎めたことをきっかけに日常に変化が。数々の嫌がらせを受けるようになった里奈は、口論になった女性が犯人だと疑い、証拠を掴むために行動を起こしていく。しかし事態は思わぬ方向へ展開し……。閑静な住宅地という閉鎖的な人間関係から悪意のない誰かの行動が人を傷つけていくという人間関係の本質を描く『この街の誰かに嫌われています』(グラハム子/KADOKAWA)。サスペンスセミフィクションである本作誕生の経緯から自身の体験まで、著者であるグラハム子さんにお話を伺いました。

――まず、本作執筆のきっかけを教えてください。

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グラハム子さん(以下グラハム子):同じタワマンに住む3家族の人間模様を描いた、窓際三等兵さん原作の『タワマンに住んで後悔してる』の漫画を担当したのですが、その時の編集の方から「あなたの正義は誰かを傷つけていないか」というテーマで描きませんかとお話をいただいたんです。その言葉からいろいろと考えていく中で今の設定を思いついて、そこから肉付けしていきました。

担当編集:本作は「シリーズ立ち行かないわたしたち」から発刊しているのですが、このシリーズは人には言えないような心の内、ままならない人の日常を描いています。自分の話だと感じる、自分の日常でも起こりうる話だと感じてもらうために共感性とリアリティが作品に求められるのですが、グラハム子さんだったらその2つを生み出してくれると思ってお願いしました。

――「正義感が誰かを傷つけていないか」というテーマから、「郊外の一軒家を購入して住み始めた女性を主人公にして、ご近所トラブルについて描こう」というところに至ったのはなぜなのでしょうか?

グラハム子:私自身郊外の一軒家に住んでいて、子どももいて……というところで主人公の環境とほぼ似た生活を送っているんです。私が住んでいる地域も新しく引っ越してきた人もいれば、昔ながらの自治会があってPTAがあって、とさまざまな属性の人が住んでいるんですね。この作品のようにお隣の人がすごく怪しいとかそういうことはないのですが(笑)。どの地域でもあるような悩みが身近にあるので、自分自身の経験から思いつきました。

――てっきりモデルにした人がいたのかと思っていました。それくらいリアルなお話だったと思います。ご自身の経験以外に取材などはされたのでしょうか?

グラハム子:ありがとうございます。取材、というほどではないのですが実際にご近所トラブルを経験した人に話を聞いたりしました。あと本作に出てくる“道路族”についてはSNSを検索したりしましたね。道路族とは、自分の家の前や周辺の道を自分のもののように使ってしまう人のことを言うのですが、子どもを遊ばせている、みたいな話からバーベキューをしてしまう人もいたりして……改めて調べたらかなりおもしろかったです。

取材・文=原智香

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