ご近所が怪しい人だらけに見えるのはなぜ? ご近所トラブルが発端のミステリー作品が描く人間模様【著者インタビュー】
公開日:2025/8/26

子どもが小学校に入学するタイミングで郊外の住宅地に家を買ったとある家庭。主人公・平川里奈は、近所のママ友や町内会の人たちに溶け込み、順調なスタートを切っていた。しかしある日、公園で自分の子どもを激しく叱責する女性を咎めたことをきっかけに日常に変化が。数々の嫌がらせを受けるようになった里奈は、口論になった女性が犯人だと疑い、証拠を掴むために行動を起こしていく。しかし事態は思わぬ方向へ展開し……。閑静な住宅地という閉鎖的な人間関係から悪意のない誰かの行動が人を傷つけていくという人間関係の本質を描く『この街の誰かに嫌われています』(グラハム子/KADOKAWA)。サスペンスセミフィクションである本作誕生の経緯から自身の体験まで、著者であるグラハム子さんにお話を伺いました。
――グラハム子さんは本作で初めてミステリー、サスペンス要素のある作品に挑戦されたとのことですが、挑戦したのはなぜでしょうか?
グラハム子さん(以下グラハム子):コミックエッセイでデビューしたので、創作ものを描いたことがなかったんです。この作品もセミフィクションなので完全な創作ではないのですが、創作の要素がある作品を描いてみたいという気持ちがあったので、挑戦してみようと思いました。
――隣人、ママ友、市議会議員一家などたくさんの人が登場しますが、登場人物はどのようにして決めましたか?
グラハム子:編集さんとまず「いろいろな伏線を張って、誰が犯人かわからないようにしよう」とお話ししたので、登場人物は自然と増えていきました。人間って、自分の心模様次第で全員がうっすら敵に見えちゃうことも、「周りの人がみんな自分の味方をしてくれている」と感じる時もあるじゃないですか。その主人公の心模様も描いていきたかったので、とにかくたくさん人物を出そうと。物語としてまとめられる限界まで出しましたね。
――読者の反応はいかがでしたか?
グラハム子:「こいつが怪しい」みたいな感想も結構いただきました。みなさん自分の中で推理しながら読んでいただいていたのが嬉しかったですね。こちらのミスリードに引っかかってくださっているものもあれば、かなり初期の段階で結末を予想されている方もいらして。絵の細かい部分までじっくり見て考察してくれている方がいるのもミステリー作品ならではの反応だなと思いながら読んでいました。
取材・文=原智香