嫌がらせをしてきた犯人はこの人に違いない…思い込みをで動く危うさとは?【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/8/30

 子どもが小学校に入学するタイミングで郊外の住宅地に家を買ったとある家庭。主人公・平川里奈は、近所のママ友や町内会の人たちに溶け込み、順調なスタートを切っていた。しかしある日、公園で自分の子どもを激しく叱責する女性を咎めたことをきっかけに日常に変化が。数々の嫌がらせを受けるようになった里奈は、口論になった女性が犯人だと疑い、証拠を掴むために行動を起こしていく。しかし事態は思わぬ方向へ展開し……。閑静な住宅地という閉鎖的な人間関係から悪意のない誰かの行動が人を傷つけていくという人間関係の本質を描く『この街の誰かに嫌われています』(グラハム子/KADOKAWA)。サスペンスセミフィクションである本作誕生の経緯から自身の体験まで、著者であるグラハム子さんにお話を伺いました。

――主人公は自分の家に嫌がらせしてくる犯人は、公園でトラブルになった人だと思い込みます。

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グラハム子さん(グラハム子):主人公は視野が狭いんですよね。頭が固いというか、一度思い込んでしまったらなかなかそれを変えられない人というイメージでこの展開にしました。ただ、一度「この人が怪しい」と思ったらその人の行動のすべてが怪しく見える、というのは多くの人が理解できる感情じゃないかなと思います。

――確かにそういう人はいますし、自分自身もそうなっている時もあるなと思いました。

グラハム子:あと集団って、ひとり敵を作っておくと団結しやすいというのもあると思うんです。今回だったら主人公の周りもみんな「あの人が怪しい」と思い込んでしまう。グループの中でもひとりそういう敵を作ることによって生まれる連帯感というか。そういう部分も人間らしさだなと思って描きました。

――確かにママ友界隈でも職場でもそういうことってよくあります。そうして主人公が思い込みを強める一方で、主人公の夫は一歩引いているテンションです。

グラハム子:これは世の中こういう人もいる、という対比を描きたかったのもあります。そうじゃない方もいると思いますが、夫は子育てに協力的でも母親ほどの熱量がないケースが多いように感じています。母親側からすると、子どものことやご近所付き合いってかなり重要で大きな問題ですが、夫が外に働きに行っている場合、これらのことを脳が占拠する割合はかなり低いのではないかと思うんですね。そういう温度差を表現しました。

取材・文=原智香

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