物語のメリハリとリアリティ。担当編集と著者、それぞれの強みを二人三脚で展開【著者インタビュー】
公開日:2025/9/3

子どもが小学校に入学するタイミングで郊外の住宅地に家を買ったとある家庭。主人公・平川里奈は、近所のママ友や町内会の人たちに溶け込み、順調なスタートを切っていた。しかしある日、公園で自分の子どもを激しく叱責する女性を咎めたことをきっかけに日常に変化が。数々の嫌がらせを受けるようになった里奈は、口論になった女性が犯人だと疑い、証拠を掴むために行動を起こしていく。しかし事態は思わぬ方向へ展開し……。閑静な住宅地という閉鎖的な人間関係から悪意のない誰かの行動が人を傷つけていくという人間関係の本質を描く『この街の誰かに嫌われています』(グラハム子/KADOKAWA)。サスペンスセミフィクションである本作誕生の経緯から自身の体験まで、著者であるグラハム子さんにお話を伺いました。
――本作を描く上で、編集者とはどんな話し合いをされましたか?
グラハム子さん(以下グラハム子):話し合いというか、この作品はかなり担当編集さんのアイデアも入っているんですよ。なので、ふたりで一緒に作り上げている感覚があって、それがすごく楽しかったですね。お互いの得意なところを出しあえたから、大変だったところも乗り越えられたんだと思います。
――お互いの得意なところというのは具体的にどんなところですか?
グラハム子:担当編集さんはやっぱり物語を作るのが上手いので、私がちまちま描いていた部分を「ここは盛り上げましょう」と見せ場になるように調整してくれて、物語にメリハリが生まれたと思います。反対に担当編集さんは男性なのでママ友とのやり取りはあまりわかっていなくて。そこの部分は私がよりリアルさを追加していった感じです。例えば主人公と向かいに住むママ友は、最初からいきなり下の名前で呼び合っていたんですよ。でもママ友って名字呼びか、「○○くんママ」というような子どもの母としての呼び方から入って、年齢を聞いて、だんだん名前呼びに移行していく……というようなプロセスがあるじゃないですか(笑)。そういう細かい表現の部分を私が追加していきました。
――特にここを読んでほしい、というページやエピソードはありますか?
グラハム子:主人公の過去ですね。1ページしかないんですが、あそこ気に入っているんですよ。主人公は本当にいい人なんだけど、正義感が強すぎるがゆえにウザがられてしまう。あそこを知っているかいないかで主人公の印象がガラっと変わると思いますし、主人公だけじゃなく、登場人物全員頑張っているんだよな、というのも表現できた1ページだと思っています。
取材・文=原智香