犬好きの著者が捧げる、全犬への賛美。犬への愛を温かなイラストと詩で綴る『犬たちの詩』【書評】
公開日:2025/8/22

『犬たちの詩』(のい(noigashira)/KADOKAWA)は、犬好きの著者による「犬への愛情」を表現したイラストと詩がまとめられた詩集である。
犬への愛を惜しみなく綴る本作。思わず愛犬をギュッと抱きしめたくなるような読後感を与える1冊となっている。
本作に詰め込まれた温かなタッチの水彩画と詩の数々からは、犬とのふれあいから生まれた著者の感情や、熱い賛美の思いが伝わってくる。
詩集、と聞くと少し難しく感じるかもしれない。しかし、のいさんの詩にはどれもシンプルな言葉が用いられている。凝った言葉ではなくとも、犬との何気ない日常で生まれた確かな感情が率直に言語化されているのだ。
言葉がシンプルな分、犬と暮らしたことのある人にはのいさんの思いをイメージしやすく、自身の思い出を重ねて共感できる部分も多いことだろう。
明るい作品が多い一方、中には哀愁を滲ませるものも。愛犬の早い鼓動を惜しむ気持ち、泣きそうになる瞬間など、過ぎていった愛犬との時間にのいさんが思いを馳せているような作品もあった。
現在進行形で犬と暮らす筆者も、今後の愛犬との別れを考えてしまうことがある。詩集を読みながら、まるでこれからの自分の姿を覗き見ているようで胸が痛んだ。印象的だったのは「雷に怯える君の小さな背中 さすった事さえ思い出になるのか」という詩。添えられたイラストも含め、ぜひどんなシチュエーションの詩なのか、あなた自身の目で確かめてほしい。
人と犬は寿命が異なるため、それを思うと心苦しくなるときもあるだろう。しかし誰もが「犬と一緒にいられる時間や思い出を大切にしたい」と願っているはずだ。そんな切実な思いを、本作は思い起こさせてくれる。
『犬たちの詩』には描きおろしに加え、のいさんと暮らす白い犬・福さんについて語る「福のこと」も収録されている。犬を愛するすべての人に、迷わずおすすめしたい。