あの必殺技の誕生秘話も描かれる「ダイの大冒険」前日譚! 物語は若かりしおなじみのキャラたちが登場する第二部へ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王』【書評】

マンガ

PR 公開日:2025/8/25

ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王
ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王(三条陸:原作、芝田優作:漫画/集英社)

 先日、同年代で40代の友人と小学校時代の話をしていた時、「アバンストラッシュ」のマネをして傘を壊し、親に叱られたという経験が完全一致した。この年代の男子諸兄が「マネしたマンガの必殺技」と言われて真っ先に思いつく人が多いであろうこの「アバンストラッシュ」とは、1989年から1996年に『週刊少年ジャンプ』で連載された『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-(以下、「ダイの大冒険」)』(三条陸:原作、稲田浩司:漫画/集英社)で、主人公のダイが使用する強力な必殺技だ。

 そのダイの師匠で「アバンストラッシュ」を編み出した「アバン先生」こと、勇者・アバンの若き日の活躍を描いた外伝作品が『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王』(三条陸:原作、芝田優作:作画/集英社)である。


「ダイの大冒険」の物語に関わる新事実や、登場人物たちの若き日の姿、そして「アバンストラッシュ」の誕生秘話が描かれる本作は、夢中で傘を振り回していたファンにとってはたまらない要素が満載。もちろん本作が初見の人にも、冒険と成長、バトルを楽しめるファンタジー作品としておすすめしたい作品になっている。

あのキャラたちも登場! 若き先生が魔王討伐の旅へ

 ダイが師匠であるアバンと出会う十数年前、魔王ハドラーが魔物の軍勢を率いて世界侵略に乗り出す。その野望を阻止するために立ち上がったのが“勇気ある者”、すなわち勇者である。

 魔王軍の侵攻を唯一手こずらせていたのがカール王国の騎士団で、アバンこと、アバン=デ=ジニュアール3世は、そんな最強騎士団に所属していたが少しとぼけた姿ばかり見せる騎士であった。だがアバンは勇者としての強い力を隠し持っており、来るべき時までその実力を誰にも見せずにいたのである。

 そして、ついにその時が訪れる。ハドラーと魔王軍が直接カール王国の襲撃を開始したのだ。しかしアバンは幼馴染で騎士団長のロカの力を借りつつ、ハドラーの撃退に成功する。かくしてアバンは勇者としてハドラーを倒す旅へ。彼とロカが結成したパーティには、道中で出会った僧侶のレイラ、魔法使いのマトリフが加入。またアバンは拳聖・ブロキーナとの出会いと修業を通して「アバン流刀殺法」を完成させ、やがて後進へ受け継がれていく奥義「アバンストラッシュ」を編み出し、そしてハドラーと対峙する。なお、ハドラー率いる魔王軍にも「ダイの大冒険」で活躍したキャラクターが登場するので楽しみにしてほしい。

物語は第二部へ突入。世界を旅するアバンが出会ったのは?

 ハドラーとの戦いを描いた第一部が終わり、単行本第12巻からは第二部がスタート。アバンは魔王城で出会った少年ヒュンケルを連れて世界各地を旅していた。目的は未来の勇者を育てることと、世界のどこかで蠢き始めている未知の脅威を見つけ出すことであった。

「勇者」から「先生」となったアバンに、地上の強者との戦いを求める謎の集団「ベルクス」が襲いかかる。彼らは魔界最高の名工と呼ばれる武器職人の一族「ベルク」が生み出した、意思を持つ「はぐれ武器」たちだった。その強さは魔王ですら一目置いており、地上最強の獣人であるクロコダインに重傷を負わせるほどだった。

 弟子のヒュンケル、武器コレクターのグノータ、その孫娘のシュプレと協力し、アバンは魔剣のライゼ、魔槍のフーガ、魔鎖のタークスと対決する。果たしてこの戦いの結末は――。

 アバンへ思いを寄せるカール王国のフローラ姫、まっすぐで純情なロカ、そしてアバンに対し複雑な思いを胸に秘めたヒュンケルと、「ダイの大冒険」に登場した彼らの思いや行動が濃密に描かれ、のちの活躍を知る人はかなりワクワクするだろう。

 また、設定や世界観も分かりやすく、メインテーマとなる勇者アバンと魔王ハドラーとの因縁も物語序盤で提示されているので、本作から読み始めてもストーリーにしっかり入り込める。

 色あせることのない「ダイの大冒険」の世界をさらに広げる前日譚。あの頃夢中になって読んだ私たちの冒険心を呼び起こす、懐かしくも新しい魅力がぎっしりと詰まっている。

文=古林恭

『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王』を無料で試し読み!
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