初対面で『絵を描かせて』!?距離感ゼロの天真爛漫女子と不器用強面男子、正反対すぎる2人の恋【書評】
公開日:2025/9/8

日々にトキメキや癒しが足りていない人には『メンチ切って、恋。』(なも/KADOKAWA)をぜひ読んでほしい。正反対な2人が織りなす凸凹ラブコメディだ。読めば、思わず頬がゆるんでしまう甘酸っぱくてあたたかな物語である。
しがない漫画家の溝裡伊咲(みぞうちいさき)は奈良から引っ越し、新生活を始めるべく東京にやってきた。偶然カフェで出会ったのは、強面の男・丹場飛世鷹(たんばひよたか)。絶妙なポージングと服のシワが気に入り「絵を描かせてほしい」とお願いする伊咲。そんなちょっと変わったお願いがきっかけで2人の縁が始まる。天真爛漫な伊咲に振り回されつつも、なんだかんだ世話を焼いてしまう飛世鷹。強面な容姿から誤解されがちな飛世鷹と、まっすぐ素直に感情を表現する伊咲の恋を描く。
飛世鷹は、目つきの悪さとヤンキーのような見た目で誤解されてきた不器用な男。本意に反して喧嘩ばかり強くなってしまった彼の学生時代を知ると、胸が苦しくなる。しかし伊咲は、そんな彼の外見ではなく内面を見てくれる存在。飛世鷹が抱えてきた過去や偏見を、伊咲の素直さが少しずつ溶かしていく様子には胸があたたかくなる。その優しさに触れたことで、無愛想だった彼が見せる可愛い笑顔や自然な表情には、思わずキュンとさせられるだろう。
伊咲自身も魅力的なキャラクターだ。小柄で可愛らしい外見ながら、漫画家として新たな一歩を踏み出すために東京で一人暮らしを始めたり、初対面の飛世鷹にも物怖じせず話しかけたりと、行動力のある性格が光る。常に前に進もうとする彼女の前向きさや、飛世鷹に限らず誰にでもまっすぐ接する姿は読者を惹きつける。時には天然で空回りしてしまうこともある彼女だが、そこを優しく支える飛世鷹とのバランスが絶妙だ。
正反対だからこそ、お互いに足りない部分を自然と補い合う2人。少しずつ距離を縮めていく関係は、見ているだけで幸せな気持ちになる。優しさと癒しとトキメキがギュッと詰まった恋物語を、楽しんでみてはいかがだろうか。
文=ネゴト / fumi