狼は悪役ではなく、家族。グリム童話のストーリーを覆す、迷子の子狼と赤ずきんの優しい物語【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/9/1

 グリム童話『赤ずきん』で、赤ずきんは森で出会った狼に騙され、おばあさんとともに食べられてしまう。その展開を大きく覆し、癒やしの物語にしたのが『赤ずきんちゃんとオオカミさん』だ。

 ある日、赤ずきんが出会ったのは、迷子になった小さな狼。心優しい赤ずきんは狼をそっと抱きしめ、家へと連れて帰った。

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 やがて時は流れ、甘えん坊だった子狼は今や赤ずきんをはるかに凌ぐ体格に育ち、凛々しく頼もしい存在へと成長する。それでも、赤ずきんの狼への接し方は昔とまるで変わらない。頭をなで、優しく声をかけ、時には寄り添って眠るその姿は、まるで慈愛に満ちた聖母のよう。

 赤ずきんと狼の仲睦まじい姿が印象的な本作は、X(旧Twitter)を中心に人気が高まっており、4万以上のいいねが集まる投稿も。

 作者・七星(@nanataroo_7)さんにインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。

本来は交わらないもの同士が寄り添う姿を描きたかった

ーー本作を描こうと思ったきっかけや理由を教えてください。

 きっかけは、大きな動物と触れ合ってみたいとふと思ったからです。

 もともと「動物+人物」といったモチーフのイラストを多く描いていたのですが、そこにもう少し物語性を加えた創作をしていきたいと考えるようになり、本作を描きました。

ーーこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントを教えてください。

 狼の姿、主に大きさに変化がありますが、小さい頃と変わらない関係であるというところに良さを感じていただけたら嬉しいです。

ーー本作における赤ずきんと狼の関係は、主にどのような距離感を意識して描かれていますか?

 家族のような関係をイメージして描いています。お互いに協力し合って生活をしているのだと思います。

ーー「赤ずきん=怖い狼に襲われる話」ですが、狼をあえて悪役ではなく家族のような存在として描いた背景には、どのような思いがあったのでしょうか?

 本来はお互いに共存することのない赤ずきんちゃんと狼が、一緒に生活をしていく姿に魅力を感じるからです。心を通じさせることが難しいもの同士が、お互いを理解していく様子は素敵だなと思います。

ーー成長前と成長後の狼について、それぞれの描写で違いを出すために意識したポイントを教えてください。

 サイズ感の対比はもちろんなのですが、幼い頃から赤ずきんちゃんとともに生活をする中で教わったことを、大きくなった狼がしっかり覚えているという描写にもこだわりました。

 狼の成長を感じられるように意識して描いています。

ーー読者の感想の中で印象に残ったものを教えてください。

 寄り添っているシーンでは、力加減などを細かく描写しているわけではありません。それでも、大きくなった狼が赤ずきんちゃんを傷つけないように、優しく接している様子を感じ取ってくださった感想がありました。そのような繊細な部分まで汲み取っていただけて、とても嬉しく思います。

ーー今後の展望や目標をお教えください。

 今後ものんびりと赤ずきんちゃんと狼の生活を描いて行けたらいいなと思っております!

ーー作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

 いつも見守ってくださる皆様、本当にありがとうございます!

「大きなケモノとの生活をしてみたい」という欲を満たすと同時に、読む方にとって日々の癒やしとなるような作品をこれからも制作していきます。引き続き見ていただけると嬉しいです。

取材・文=ネゴト / 糸野旬

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