第27回「おかえり水平線」/鈴原希実のネガティブな性格がちょっとだけ明るくなる本
公開日:2025/8/27

最近暑い日が続いていますが、みなさんお元気でしょうか?
きっと夏バテ気味だとか、暑くて外に出るのにすごく勇気がいるという人も多いのではないかと思います。
私自身も最近の暑さにはかなりやられてしまっておりまして、夏らしいことをしたいなと思いつつ仕事以外はほぼ家に篭ってしまっている、そんな毎日です。
このように一日過ごすのも一苦労な最近の暑さだと、いつしか心も一緒にザワついてしまったりすることもあるのではないでしょうか?
暑さでどんどん心に余裕がなくなってしまったり。
頭がぼーっとしてしまって周囲を気にかけられなくなってしまったり。
そんなことも時にはあるかもしれません。
そんな時に読んでいただきたい本が、今日ご紹介する『おかえり水平線』です。
こちらの作品は、海辺の街で祖父と銭湯を営む遼馬という少年が、いつものように学校帰りに開店準備をしていると、父の隠し子を名乗る玲臣という少年がやって来て…!というところから始まる、銭湯を舞台に繰り広げられる高校生群像劇となっています。
この作品は「少年ジャンプ+」というアプリで連載されており、私自身よく使用しているアプリということもあり、何の気なしに第1話を開いたのがこの作品と出会ったきっかけでした。
数ページめくった瞬間に、「あ、この作品好きなやつだ」となったんです。
そのくらい銭湯の描き込み具合だったり、絵柄の温かみだったりがどストライクで、どんどん物語に引き込まれていきました。
作品の内容も、銭湯と学校が主な舞台となっている人と人との関わりを描いた作品となっていまして「好きなやつだ…!」とめちゃくちゃ感動したのを覚えています。
今日はぜひ皆さんに、こちらの作品に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいなという一心で文章を綴っています。
そのくらい今おすすめしたい作品となっております。
さて、何がそんなにおすすめなのか?
何が私に刺さったのかといいますと、やはり登場人物達の人を想う温かさではないかと思うのです。
今まで紹介した作品を見ると大体察しておられるかと思うのですが、私は人の優しさや温かみが描かれている青春群像劇が大好きで大好きで仕方ないんですね。
その要素がこれでもかと盛り込まれているのがこちらの作品なんです。
私がこの作品で特に素敵だなと思うのは、それぞれの登場人物が、各々の性格や考え方が違うのを尊重しており、干渉しすぎず、でも本当に困っている時は隣に寄り添えるような性格の持ち主というところ。
これってこうありたいと思っても、なかなか出来ることじゃないですよね。
それをサラッとやってのけることが出来る人柄の良さがこの作品に出てくるキャラクター達の魅力かなと思います。
というように、キャラクター達の人柄の良さみたいなものは皆さんに伝わったのかなと思うのですが、もうひとつこの作品の魅力で皆さんにお伝えしたいことがあるんです。
それが、重みと軽やかさのバランスです。
この作品は、あらすじにあった通り、題材自体かなり重みのあるものを扱っております。
これだけ聞くとかなり読み心地もずっしりとするのかなと思うのですが、読後感が驚くほどほっこり軽やかなのです。
それがこの作品の凄いなと感じている部分です。
やはり銭湯を舞台にしているからでしょうか。
お風呂というのは、1日の疲れを洗い流して明日に向かう場所なのかなと個人的には感じていて。
そんな場所だからこそ、日々の辛さや疲れ、モヤモヤした気持ちや重たい荷物をふっと軽く出来るような。
重みを優しさで包み込んでくれるような、そんな温かさで溢れた読後感になるのかなと思いました。
そして個人的には遼馬の祖父の存在もすごく大きいのかなと思います。
私は祖父の言葉の一つひとつの重みや、対応の的確さに尊敬の念を抱きました。
例えば、辛いことがありお酒を浴びるほど飲んだお客さんが銭湯にやってくる場面。
玲臣という少年がそのお客さんに肩を貸して対応をするのですが、その様子がすごく危なげで、見ているこちらも不安になってしまうんです。
そんなときに祖父が一言、「やらんでええ」と出てくるのです。
その場面の安心感というか、こちらも一緒にその場面にいたかのような緊迫感からのほっとする感じがすごく印象に残っていて、こんな大人になりたいなと強く感じました。
このように素敵な人柄の登場人物と銭湯の温かさが丁寧に描かれている作品、「おかえり水平線」。
ぜひ1話だけでもいいので、この作品に触れる人が1人でも増えることを願っています。
