小林有吾「『アオアシ』がダメだったら人生が終わる」という感覚があった。ライバルのハングリー精神が強い理由とは【小林有吾×担当編集 今野真吾インタビュー 後編】
公開日:2025/8/30
面白い漫画を描きたいので、そのためには手段を選ばない
ーー最後にひとつお聞かせください。この10年間、一緒に仕事をされてきて、小林先生にとって今野さんはどんな存在ですか?
小林:僕はすごく論理的に話を考えて、言語化をするのが得意なタイプ。それと真逆なのが今野さんでした。今日も話題に出た「なんだかイヤだな」という、もやっとした言葉にならない感覚。それは僕が持ち合わせていないものでした。僕の見た景色からはお目にかかれないような違和感を彼が察してくれて『アオアシ』という作品が完成したんです。『アオアシ』は今野さんと作りました。もうそれは間違いないです。

ーー漫画家と編集者、二人三脚で作る方もいれば「編集者は不要」という作家さんもいます。様々なスタンスがあると思いますが、小林先生は編集者の存在をどのように考えていますか?
小林:僕が絶対的に信じているのは、ひとりの人間の頭で考えるものには限界があるということです。どんな天才漫画家や巨匠でも、その限界は超えられないと思うんです。だから、作者の頭に編集者がどれだけ入っていけるかが重要で。優れた編集者がいるのが、名作の条件のひとつだと僕は思っています。
ーー今日のお話でも、今野さんとたくさんバトルをしたと。しんどかったけど、でもそのバトルの末にいい展開がたくさん生まれたということでした。
小林:そうですね。ひとりきりで気持ちよく描けたらラクですが、俺は面白い漫画を描きたいので、そのためには手段を選ばないと決めています。『アオアシ』は今野さんと作品についてたくさん話せてよかった。だから、世の編集者さんは、作家に遠慮なく人間としてぶつかってほしいなと思いますね。
ーーありがとうございます。今野さんは10年を振り返っていかがでしたか?
今野:陳腐な言葉ですが、かけがえのない10年でした。幸せだった。小林さんという希代の漫画家の大ヒット作に携わらせてもらうことができて、ものすごくラッキーだった。僕は本当に、ただ「なんだかイヤ」とか言っていただけですが(笑)。それでも得がたいものを経験させてもらったから、今後それを世の中に返していく番だな、みたいなことを思うようになりました。
ーーありがとうございます。2026念には『アオアシ』のアニメ2期も始まりますし、お2人での仕事は続くのだと思いますが、打ち上げで飲みに行ったりしないんですか?
小林:え、打ち上げですか(笑)。しますか?
今野:これ以上話すことがあるのかというぐらいたくさん話したので(笑)。でも、まだまだ話すべきことがあるはずですので、これからもよろしくお願いします。
取材・文=金沢俊吾
<第5回に続く>