ママの不満を“パパ側”から見たらどうなる?主夫と大黒柱妻の奮闘を描いた漫画【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/9/5

 共働きのパパママと息子の3人暮らしという、どこにでもある子育て家庭の川田家。ところが、人づきあいが苦手な夫の俊(とし)が会社を辞めてからは家庭での役割が激変。それまで家事育児はほぼ妻の沙月が担っていたが、俊は【主夫】として家事と育児をこなし、沙月は【大黒柱妻】として家計を支えることになる。

 ある日、彼らは“何かを変えたい”という想いで都会から葉山に移住。山や海などの自然があふれ、ご近所づきあいが盛んなこの町で、俊は会社員の頃とは違う人づきあいに奮闘する。一方の沙月は、俊の家事や育児に不満タラタラ、仕事では上司と部下の板挟みに…。

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 それぞれの立場で悩む彼らが、葉山の豊かな自然に癒され、そこに住む人々との関わりの中で徐々に変わっていく漫画『夫ですが会社辞めました』(とげとげ。/KADOKAWA)。川田家が移住先で見つけた、ちょうどいい家族のかたちや、疲れない人間関係とは? 作者のとげとげ。さんに本作への想いを聞きました。

——家族の関係や人づきあいの距離感を考えるきっかけになるような漫画でした。どのような想いで本作を描き始めましたか?

とげとげ。さん(以下、とげとげ。):描き始めたのはコロナ禍でした。私はひとりで過ごすのが好きなので人と会えなくても快適でしたが、感染の不安や、休校した時の大変さ、思うようにいかない仕事などでストレスが溜まってしまって。そんなとき、ママ友と交わした何気ない会話で気持ちがふっと軽くなり、狭くなっていた視界が開けていったんです。人とのつながりって、しんどくなることもあれば、救われることもある。じゃあ、“つらくならないつながり方”ってどんなふうだろうと感じて、この作品を描き始めました。

——川田家では、人づきあいで傷ついて会社に行けなくなった夫の俊が家事と育児をこなし、妻の沙月がアパレル会社で企画の仕事をして家計を支えています。「主夫」と「大黒柱妻」を題材にした理由とは?

とげとげ。:これまでは主に“ママ視点”で母親の大変さを描いていましたが、パパを一方的に責める内容になっているのではないかと気になり、逆の視点——“パパ側”から見た物語を描こうと思いました。

 共働き世帯が増えている、多様化しているといっても、未だに「男は外へ働きに出て稼ぎ、女は家庭を守る」という固定観念に囚われている人も多いように感じます。「主夫」と「大黒柱妻」を題材にしたのは、そのような“性別に充てられた役割”を逆転させることで初めて見えてくる気づきがあると思ったからです。

——とげとげ。さんの家でも、育児や家事を分担していますか?

とげとげ。:我が家も共働きで、コロナ禍で夫がテレワークになったときに、夫の家事分担が増えたんです。すると、「この食器はあっちに置いて」(自分ルールの押し付け)とか、「洗剤の補充はいつも俺だよね」とか、それまでは私が夫に言っていたようなことを逆に言われるようになって。家事の不満やストレスは性別に関係なくあるものなんだ…という気づきも、“役割が逆転した夫婦”を描くきっかけになりました。

取材・文=吉田あき

とげとげ。
元ナースの漫画家・イラストレーター。埼玉県出身、葉山町在住。自身の育児漫画日記『ママまっしぐら』、創作育児漫画『夫ですが会社辞めました』『母ですが妻やめました』『「小1の壁」の向こうに』など、リアルな育児を描く。

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