「育児が完璧じゃなくても親子の絆は育つ」主夫が経験した、病児の世話の大変さに共感の声【著者インタビュー】
公開日:2025/9/9

共働きのパパママと息子の3人暮らしという、どこにでもある子育て家庭の川田家。ところが、人づきあいが苦手な夫の俊(とし)が会社を辞めてからは家庭での役割が激変。それまで家事育児はほぼ妻の沙月が担っていたが、俊は【主夫】として家事と育児をこなし、沙月は【大黒柱妻】として家計を支えることになる。
ある日、彼らは“何かを変えたい”という想いで都会から葉山に移住。山や海などの自然があふれ、ご近所づきあいが盛んなこの町で、俊は会社員の頃とは違う人づきあいに奮闘する。一方の沙月は、俊の家事や育児に不満タラタラ、仕事では上司と部下の板挟みに…。
それぞれの立場で悩む彼らが、葉山の豊かな自然に癒され、そこに住む人々との関わりの中で徐々に変わっていく漫画『夫ですが会社辞めました』(とげとげ。/KADOKAWA)。川田家が移住先で見つけた、ちょうどいい家族のかたちや、疲れない人間関係とは? 作者のとげとげ。さんに本作への想いを聞きました。
——子どもが病気になると、お世話と家事がエンドレスで続く…というエピソードは、“子育てあるある”だと思いました。ご自身の経験をもとにしたエピソードですか?
とげとげ。さん(以下、とげとげ。):はい、実際の経験をもとに描きました。子どもが体調を崩すとすべての段取りが崩れて、何一つ予定通りに進まなくなるんですよね。しかも、いつ終わるのかもわからず、気持ちがどんどん削られていく…。読者の方からも「わかる!」「まさに今日それでした!」という共感の声を多くいただきました。
——以前は沙月に聞かないと息子の面倒を十分に見られなかった俊ですが、息子との関わりが増えるにつれ、できることが増えて、愛情が増していきます。俊の中で何が変わったのでしょうか?
とげとげ。:以前は「どうせ自分じゃできない」と思い込んでいたけれど、子どもと関わることで達成感や喜びが生まれたのだと思います。俊はのんびりした気質で、子どものペースに自然と合わせられる。急かさず、競わず、じっくり向き合う姿勢は、もともと育児に向いていたんだと思います。育児って、うまくやるというより、どう関わったかの積み重ねだと思うので、“完璧じゃなくても関わることで親子の絆は育っていく”ことを丁寧に描きたいと思いました。
取材・文=吉田あき
とげとげ。
元ナースの漫画家・イラストレーター。埼玉県出身、葉山町在住。自身の育児漫画日記『ママまっしぐら』、創作育児漫画『夫ですが会社辞めました』『母ですが妻やめました』『「小1の壁」の向こうに』など、リアルな育児を描く。
<新連載『50歳、その先の人生がわからない』(よみタイ/集英社)スタート!>
同じ高校を卒業して30年、それぞれ異なる生き方をしてきた二人の同級生が、キャリア・家庭・老いといった人生の分岐点に立ち、それぞれの「これから」を見つめなおす物語。2025年8月24日より月1更新中。