子どものトラブルが原因でママ友に無視され…。「大変ですね」と言われて号泣したママに共感の声【著者インタビュー】
公開日:2025/9/11

共働きのパパママと息子の3人暮らしという、どこにでもある子育て家庭の川田家。ところが、人づきあいが苦手な夫の俊(とし)が会社を辞めてからは家庭での役割が激変。それまで家事育児はほぼ妻の沙月が担っていたが、俊は【主夫】として家事と育児をこなし、沙月は【大黒柱妻】として家計を支えることになる。
ある日、彼らは“何かを変えたい”という想いで都会から葉山に移住。山や海などの自然があふれ、ご近所づきあいが盛んなこの町で、俊は会社員の頃とは違う人づきあいに奮闘する。一方の沙月は、俊の家事や育児に不満タラタラ、仕事では上司と部下の板挟みに…。
それぞれの立場で悩む彼らが、葉山の豊かな自然に癒され、そこに住む人々との関わりの中で徐々に変わっていく漫画『夫ですが会社辞めました』(とげとげ。/KADOKAWA)。川田家が移住先で見つけた、ちょうどいい家族のかたちや、疲れない人間関係とは? 作者のとげとげ。さんに本作への想いを聞きました。
——息子のカズと同じ園のナナちゃん親子。ママの理恵は、ちょっと手のかかる娘と自由気ままな夫に悩まされ、「本当もうやだ」が口癖です。子ども同士のトラブルが原因でママ友から無視されることも…。理恵のつらさをどう描こうと思いましたか?
とげとげ。さん(以下、とげとげ。):ただ愚痴っぽいだけではなく、彼女なりの葛藤や弱さがあるんです。理恵は、幼い頃から「あなたには無理」と言われ続け、周囲に夢を持つ友達もいなかった人。将来を前向きに考える機会が少なかったので「どうせ私には無理」と思ってしまうし、「なんとなく人と同じ道を選ぶ」ことが当たり前なのかもしれません。
——同じような悩みを持つ読者もいそうですが、理恵に対する反響はいかがでしたか?
とげとげ。:読者の方から「わかる!」という声がいちばん多かったのが理恵でした。誰もが抱えがちなモヤモヤや弱さ、生きづらさを持っているし、本音を隠せない性格だからこそ共感してもらえる部分が多いのかもしれません。
——理恵のエピソードは漫画『母ですが妻やめました』にもなっていますね。
とげとげ。:ナナの夫は家族より友達を優先する人で、「いずれ離婚するだろう」と思っていたんです。理恵はある出来事をきっかけに「もう一緒に生きていけない」と自覚するのですが、そのきっかけをくれたのが、ゆるくつながっている人たちでした。こういうつながりって、ふっと背中を押してくれることがありますよね。
——ゆるいつながりといえば、理恵がソラくんパパの何気ないひと言に心が動いて涙を流す場面もあります。ソラくんパパの言葉は「ママも大変ですね」というものでした。
とげとげ。:子どもの行動に注目が集まると「お母さんはどう出るのか」を問われがち。理恵も、友達とトラブルになりやすいナナのことでいつも気を張り詰めています。ソラくんパパが、アドバイスなどではなく、気持ちに寄り添ってシンプルに共感してくれたことが、理恵の気持ちを一気にゆるめてくれたのだと思います。
取材・文=吉田あき
とげとげ。
元ナースの漫画家・イラストレーター。埼玉県出身、葉山町在住。自身の育児漫画日記『ママまっしぐら』、創作育児漫画『夫ですが会社辞めました』『母ですが妻やめました』『「小1の壁」の向こうに』など、リアルな育児を描く。
<新連載『50歳、その先の人生がわからない』(よみタイ/集英社)スタート!>
同じ高校を卒業して30年、それぞれ異なる生き方をしてきた二人の同級生が、キャリア・家庭・老いといった人生の分岐点に立ち、それぞれの「これから」を見つめなおす物語。2025年8月24日より月1更新中。