「つらくない人づきあい」を手に入れた漫画家。地方移住のコツは、“想定外”を楽しむ柔軟さ?【著者インタビュー】
公開日:2025/9/12

共働きのパパママと息子の3人暮らしという、どこにでもある子育て家庭の川田家。ところが、人づきあいが苦手な夫の俊(とし)が会社を辞めてからは家庭での役割が激変。それまで家事育児はほぼ妻の沙月が担っていたが、俊は【主夫】として家事と育児をこなし、沙月は【大黒柱妻】として家計を支えることになる。
ある日、彼らは“何かを変えたい”という想いで都会から葉山に移住。山や海などの自然があふれ、ご近所づきあいが盛んなこの町で、俊は会社員の頃とは違う人づきあいに奮闘する。一方の沙月は、俊の家事や育児に不満タラタラ、仕事では上司と部下の板挟みに…。
それぞれの立場で悩む彼らが、葉山の豊かな自然に癒され、そこに住む人々との関わりの中で徐々に変わっていく漫画『夫ですが会社辞めました』(とげとげ。/KADOKAWA)。川田家が移住先で見つけた、ちょうどいい家族のかたちや、疲れない人間関係とは? 作者のとげとげ。さんに本作への想いを聞きました。
——俊たちが引っ越した葉山は、とれたてワカメやヨモギ団子など、自然の恵みを享受できる町。 とげとげ。さんも地方移住者だそうですが、引っ越してよかったと思うことは?
とげとげ。さん(以下、とげとげ。):海に山と、自然が豊かで静かなところです。駅から遠くて不便さはあるけれど、人のいないひとりになれる場所がたくさんあります。
——自然が豊富な場所で暮らす良さとは?
とげとげ。:ヨモギ団子や梅仕事は、ゆるいつながりの中で「やってみない?」と背中を押されて経験したことばかり。手間のかかる作業も、季節の流れを実感できる贅沢さがありました。何でもすぐに手に入る時代だからこそ、時間をかけて面倒なことをやってみる――そんな暮らしの楽しさや豊かさを漫画にも入れ込んでいます。
——都会の喧騒やストレスから逃れ、地方への移住を希望する人が増えています。移住を楽しむコツとは?
とげとげ。:やったことがないことや予想外のことを楽しむ気持ちでしょうか。地方って不便なことも多いし、スピード感もゆるやか。でも、思い通りにいかないことにこそ、面白さや学びがあります。「こんな経験なかなかできないな」と思える柔軟さがあると、移住を楽しめるかもしれません。
取材・文=吉田あき
とげとげ。
元ナースの漫画家・イラストレーター。埼玉県出身、葉山町在住。自身の育児漫画日記『ママまっしぐら』、創作育児漫画『夫ですが会社辞めました』『母ですが妻やめました』『「小1の壁」の向こうに』など、リアルな育児を描く。
<新連載『50歳、その先の人生がわからない』(よみタイ/集英社)スタート!>
同じ高校を卒業して30年、それぞれ異なる生き方をしてきた二人の同級生が、キャリア・家庭・老いといった人生の分岐点に立ち、それぞれの「これから」を見つめなおす物語。2025年8月24日より月1更新中。