「育児は自分のキャパを超えることの連続」。避難生活という極限の状態を経て辿り着いた“やわらかい家族のかたち”とは?【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/9/13

 共働きのパパママと息子の3人暮らしという、どこにでもある子育て家庭の川田家。ところが、人づきあいが苦手な夫の俊(とし)が会社を辞めてからは家庭での役割が激変。それまで家事育児はほぼ妻の沙月が担っていたが、俊は【主夫】として家事と育児をこなし、沙月は【大黒柱妻】として家計を支えることになる。

 ある日、彼らは“何かを変えたい”という想いで都会から葉山に移住。山や海などの自然があふれ、ご近所づきあいが盛んなこの町で、俊は会社員の頃とは違う人づきあいに奮闘する。一方の沙月は、俊の家事や育児に不満タラタラ、仕事では上司と部下の板挟みに…。

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 それぞれの立場で悩む彼らが、葉山の豊かな自然に癒され、そこに住む人々との関わりの中で徐々に変わっていく漫画『夫ですが会社辞めました』(とげとげ。/KADOKAWA)。川田家が移住先で見つけた、ちょうどいい家族のかたちや、疲れない人間関係とは? 作者のとげとげ。さんに本作への想いを聞きました。

——妻の沙月は、ある出来事をきっかけに、自分なりに家事育児をがんばる俊のありがたみに気づきます。家族っていつのまにか相手への不満が積み重なりがちですが、そんなときには何が必要だと思いますか?

とげとげ。さん(以下、とげとげ。):育児って本当に大変で、自分のキャパシティを超えることの連続。気持ちも時間も余裕がないので「察してほしい」「やってくれるはず」と相手に期待してしまい、うまく伝わらないと不満が募ってしまう。夫婦という近い存在だからこそ、「ちゃんと話し合うこと」が大事。面倒なことですが、関係を続けていくうえで大切なプロセスだと思います。

——台風がきた際の避難生活で家族それぞれの心地よさに気づいた沙月は、「主夫のままでいいんじゃないかな」と俊に提案します。それぞれに悩んでぶつかったのち、沙月と俊が見つけた「家族の形」とは?

とげとげ。:2人は避難生活という極限の状況を通して、「何を大切にしたいのか」という人生の優先順位がはっきりしたんだと思います。「こうあるべき」という世間体を手放し、家族にとって何が本当に心地いいのかを見つめ直す。そして、家族それぞれが「自分らしくいられる」状態を、時間をかけて一緒に探していく。そんなやわらかい家族の形にたどり着いたんだと思います。

取材・文=吉田あき

とげとげ。
元ナースの漫画家・イラストレーター。埼玉県出身、葉山町在住。自身の育児漫画日記『ママまっしぐら』、創作育児漫画『夫ですが会社辞めました』『母ですが妻やめました』『「小1の壁」の向こうに』など、リアルな育児を描く。

<新連載『50歳、その先の人生がわからない』(よみタイ/集英社)スタート!>
同じ高校を卒業して30年、それぞれ異なる生き方をしてきた二人の同級生が、キャリア・家庭・老いといった人生の分岐点に立ち、それぞれの「これから」を見つめなおす物語。2025年8月24日より月1更新中。

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