モラハラ、産めハラ、そして不倫。最低すぎる夫の呪縛から解放されるため、妻は気弱な自分を変えて自由と幸せのために動き出す!【書評】
公開日:2025/9/19

結婚は幸せの象徴であると同時に、捉え方によってはその後の人生を縛る鎖にもなってしまう。『“産めハラ”しといて自分は不倫!? 最低モラハラ夫からの脱出』(ネギマヨ/KADOKAWA)は夫の呪縛に苦しむ1人の女性が、モラハラ気質の夫から脱却し自分の足で歩き出すまでの過程を描いた物語だ。
主人公・西岡真奈美は、中小企業に勤めて10年目。係長として仕事は順調だが、家庭には大きな問題を抱えていた。夫・智樹は元来モラハラ気質の人間で、彼の愚痴や理不尽な態度に振り回される毎日を送っていた。さらに過去の流産をきっかけに「子どもを産め」という“産めハラ”も繰り返すようになる。仕事でうまくいかないのは子どもがいないからと決めつけ、真奈美に執拗に圧をかけ続ける智樹。次第に物を投げつけるなど行動はエスカレートしていき、真奈美は離婚を決意する。
しかし実家の両親に相談すると、父親は強く反対し、母親は父親に逆らえず従うのみ。我が子の選択を否定するその態度に深く傷つくと同時に、自分の幸せとこれから生まれてくるかもしれない子どもの未来を守るためには、誰にどう思われても行動しなければならないと悟る。彼女が決意を固める場面は読んでいて胸が熱くなる。
離婚を告げた後の智樹の言動はさらに過激さを増す。罵倒や脅しのような言葉や職場での嫌がらせのような振る舞い、さらには不倫相手の存在など、真奈美を追い詰める要素は尽きない。読みながら強い憤りや苦しさを覚え、つい真奈美に「負けるな」と声をかけずにはいられなくなる。しかし彼女は恐怖に屈することなく、自分を守るための行動を重ねていく。支えてくれる人々の存在に励まされながら未来を切り開こうとする姿は力強く、読む者に勇気を与えてくれる。
本作は単なるモラハラ脱出記ではなく、理不尽な圧力に屈せず、自分の幸せと未来を選び取る女性の物語だ。自分を大切にしていいんだという気づきを与えてくれる。この真奈美の歩みは、同じような状況にいる人の心に必ず強い火を灯すだろう。
文=ネゴト / fumi
