ギャラ飲みで得た価値は“本当の私”?港区女子がハマった虚構と代償【書評】

マンガ

公開日:2025/9/24

 こんなはずじゃなかったのに。どこで間違えたのだろう。『人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ』(うみの韻花/KADOKAWA)は、実際の港区女子たちへの取材をもとに赤裸々に描いたセミフィクション作品だ。

 田舎で変わりばえのない日常を過ごしていた高校生の美春は、あるインフルエンサーの一言がきっかけで東京の大学への進学を決意する。何かが変わると期待して上京したが、バイトに追われて憧れとはほど遠い生活。周りの同級生との経済格差に落ち込む日々を過ごしていた。そんな美春に転機が訪れる。ミスコンで準グランプリを獲得したことで、男性と食事をしたり、飲み会に参加したりするだけでお金がもらえるギャラ飲みの世界へと足を踏み入れるのだ。ギャラ飲みにのめり込むうちに価値観は変わり、お金への執着によって、徐々に歪んでいく姿が描かれる。

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 自分の価値とは何で決まるのだろうか。価値の捉え方は人それぞれだが、他人からの評価によって自分の価値を見出し続けると、いったいどうなってしまうのか。

 お金に苦労する日々が、「ギャラ飲み」を知ることで一変する美春。若さと美しさを武器にちやほやされ、もらえるお金が増えるほどに、それが自分の価値だと思い込む。自分は選ばれた人間であると信じる美春の姿は滑稽にも見えるが、SNSを通して他人の生活が簡単に見え、他人と比べやすく、自分の価値を見出しにくい現代においては、誰にでも陥る可能性がある現実を教えてくれる。

 見出した価値が賞味期限付きであることを突きつけられた美春が選んだのは、破滅への道だった……。「こんなはずじゃなかった」「どこで間違えたんだろう」と、自分の生き方を省みたり、後悔したりすることは、誰しもあるだろう。自分次第で人生をやり直すことはできるはずだ。

 地獄のような日々をただやり過ごしていた美春が、その後どのような道を選んだのか。ギャラ飲みをする港区女子たちの輝きと苦悩を知ることができる一冊だ。

文=ネゴト / Ato Hiromi

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