「グッバイぼっち」転生して、親に捨てられ、盗賊にさらわれ… 伯爵令嬢に!? 孤独な少女が幸せを掴むために友達作りに奮闘!【書評】

マンガ

PR 公開日:2025/9/9

転生少女の履歴書
転生少女の履歴書(唐澤和希:原作、鳥三空:漫画/イマジカインフォス)

 人は自分が置かれた立場を良くも悪くも受け入れ、その中にある常識にとらわれてしまいがち。しかし幸せになるためには、ときにそうした常識を乗り越えていく必要があるのかもしれない。『転生少女の履歴書』(唐澤和希:原作、鳥三空:漫画/イマジカインフォス)は、紆余曲折しながらも前を向き幸せを追求していく少女の学園ファンタジー。

 主婦の友社のヒーロー文庫から刊行されている小説が原作となっている本作は、原作1巻部分が2022年~2024年にコミカライズされていたが、待望の再コミカライズ版としての展開となる。

 本作の舞台となっているのは、魔法を使える者と使えない者がいる、魔法使いが絶対の支配階級として君臨している世界。主人公リョウは、そこに魔法が使えない者として転生した。生まれは貧しい農民出身のリョウだが、親に売られて伯爵家の小間使いとなり、そこから山賊に攫われるなど紆余曲折して、伯爵令嬢として学校へ通うことに。

 前世含め友達のいなかったリョウは、「グッバイぼっち」を目標に掲げ、友達を作ろうと奮起する。しかしそこで、仕えていた伯爵家の子息であるアランと再会。

 アランとは、かつてどちらが上かを決める勝負をしており、その結果勝ったリョウが“親分”、負けたアランが“子分”という、本来の立場とは逆の関係に。主従関係を超えた、不思議な絆があった。その後、リョウが山賊に誘拐されてふたりは離れ離れになってしまうが、ひょんなことから伯爵令嬢となったリョウは、魔法学校でアランと再会する。アランはリョウのことをずっと特別に思っており、自分の成長をアピールしようとひたすらリョウを守り世話を焼こうとしてくるのだった。

 ここで問題なのが、アランは支配階級である魔法使い、リョウは魔法を使えない者だということ。この差は学校内でも確固たるもので、それゆえに魔法使いを子分とするリョウを快く思わない者も出始める。魔法使いで伯爵家の令嬢であるクラスメイトのカテリーナも、リョウをよく思っていない生徒のひとりだ。リョウは、このままでは友達ができないと何とかアランから離れようとするが――!?

 転生前も転生後も出生に恵まれず、あちこち転々としながら、それでも明るく前向きに生きているリョウ。一方そんなリョウとは対照的に、生まれながらにして支配階級である魔法が使える伯爵家の子息として育ったアラン。籠の中で育ったといっても過言ではないアランにとって、リョウの毅然とした立ち居振る舞いや自立を感じさせる言動はとても大きく見えたのだろう。ゆえに、アランはリョウに対して貴族と使用人、親分と子分といった関係以上の深い感情を抱いている。

 生まれながらにして上に立つことが前提の魔法使いたちは、一見恵まれているように感じる。しかしそうした立場だからこその悩みや孤独もあるのだろう。そして心のどこかで、ときにはその重圧から解き放たれたいと思っているのかもしれない。クラスメイトのカテリーナも、日々リョウに対し高圧的な態度をとっているが、その背景には自身が育った環境が関係している様子。この辺りは、先日公開されたばかりの最新話で明かされていく。どんな立場にいる人でも、どんな環境に置かれている人でも、悩みを持たない者なんていない。立場の差はあっても、結局は同じ人間なのだ。

 本書を読んでいて、外から得られる情報だけで相手を判断していると、大事な本質を見逃すこともあるのだと改めて感じた。

 原作小説は現在13巻まで刊行されており、リョウの「グッバイぼっち」な奮闘はまだまだ続いていく。アランとの関係がどうなっていくのか、何かとリョウに突っかかってくるカテリーナはどう変わっていくのか、リョウがこれからどんな人生を歩んでいくのか、引き続き見守りたい。

文=月乃雫

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