未来予知能力や平行世界移動能力の使い方がそれ!? ツッコミが追いつかない、ギャルたちの異能力普段使いコメディ『しれっとすげぇこと言ってるギャル。―私立パラの丸高校の日常―』【書評】

マンガ

PR 公開日:2025/9/19

しれっとすげぇこと言ってるギャル。―私立パラの丸高校の日常―
しれっとすげぇこと言ってるギャル。―私立パラの丸高校の日常―(松浦太一:原作、おつじ:漫画/‎集英社)

 もう何度吹き出し、何度ツッコミを入れたか分からない。「そんな能力あるなら、もっと活かし方があるだろう」と誰だって言いたくなるはずだ。

 読む者を爆笑の渦に誘い、そしてツッコミ役にさせるのが『しれっとすげぇこと言ってるギャル。―私立パラの丸高校の日常―』(松浦太一(Plott):原作、おつじ:漫画/‎集英社)。最強無敵の異能力ギャルたちのレベチな青春コメディマンガだ。本書は登録者数97万人超、累計再生回数11億回を突破(2025年9月19日現在)したYouTubeチャンネル「私立パラの丸高校」をマンガ化した作品。最強ギャルたちの日常は浅いようで時に深く、当たり前のようにスゴいことが続き、もうおかしくておかしくてたまらない。

 本作の世界の人間はみな、何らかの超能力を持っている。だが全員、かなり普通に暮らしている。そんな彼らにツッコミを入れる役回りの主人公が、「ちょっと光る」だけの能力を持つ高校生・多々光だ。彼は特に同じクラスのギャルふたりのやりとりにツッコミを入れるのに忙しい。「未来予知」の能力を持つ「みらい」こと見里未来、「平行世界移動」の能力を持つ「へー子」こと平翔子。そう、このふたりが持つのは圧倒的なチート能力。それなのに、このふたりはその能力を、いつも妙な方向に使うことを当たり前としている。

 たとえば、テスト直前に突然「うちこのテスト、11点とるんだけど」「やべー」とみらいが言うと、「あー見えちゃったか未来」と、へー子。どうやらみらいはこれから受けるテストで自分が取る点数を能力で見てしまったらしいが、「見えるなら点数じゃなくて答えを見ろよ」と光が心の中でツッコむのはもっともだ。だがみらいは、「試験って『経験』を『試す』って書くじゃん だからさ うちらの経験? なんだろ ここまで積み重ねてきたものを試しに見てみてさ〜 うちらが今どこら辺にいるのか 自分で分かるためにやってるんじゃないかなーって」「だから〜 どんな点数でも受け入れるべき的な?」と、しれっとなんだか良いことを言い始める。ではそのままテストを受けるのかと思えば、みらいは「1限物理ならワンチャンいけるんだけどな〜」と言い出し、へー子の「パラレル行っとく?」という発言とともに、ふたりはテストの時間割の順番を変えるだけのために平行世界へ……。どう考えても能力の使い方がおかしいのだ。

うち昨日トロッコ問題解決したわ

あと一昨日シュレディンガーの猫助けた

うち明日テセウスの船乗るわ

 本当にしれっとこんなことを話すギャルたちの会話からは目が離せない。それにこのふたり、能力のスゴさに加えて心根が素晴らしいのだ。ある時、マンガばかり描いているオタクくんの作品を読んで「ストーリーにキャラが従属しているくない?」「これ結局作品を通して何が言いたかったん?」と厳しい講評を始めたかと思えば、「でもオタクくんさ なんかかっこいいね」「『好きでそれ?』とか思われたら めっちゃ恥ずいし そう思われたくなくてめちゃがんばると だんだん好きくなくなってくる」「好きなのにがんばってるオタクくん すごいよ」と温かい言葉をかける。思わずグッとくる人は少なくないはずだ。こんな人を元気にさせるような人間だから、このギャルたちはトロッコ問題も解決できるし、シュレディンガーの猫も救え、テセウスの船にも乗れてしまうのかもしれない。

 スゴすぎる能力を普段使いしながら高校生活を送るみらいとへー子。一度、この展開が全く予測できない面白さを味わうと、次はふたりがどんなことをするのか気になってページを捲る手が止まらなくなる。あなたもレベチな普通の青春、味わってみてはいかが?

文=アサトーミナミ

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