広島で生まれた黄色いクマの健気な姿に共感必至。地元の魅力もゆる〜くアピール【インタビュー】
公開日:2025/9/9

もちもちとした姿と食べ物を前にしたときの幸せそうな動きが印象的な『ひろくま』とは、広島県のシンボルを目指し生まれたキャラクターが主人公のイラストだ。広島で暮らすひろくまの、何気ないけれど心が温まる日常を、優しくユーモラスに描く。
夜のファミレスでひとりご飯を食べたり、雪合戦や虫採りなど季節を存分に満喫したり......。そんな小さな喜びが丁寧に描かれる一方で、お米を炊き忘れた後悔や、深夜の静けさに漂う切なさなど、少し胸にしみる瞬間も切り取られる。孤独にも見える時間が、ひろくまの健気さや愛らしさによって、じんわりと温かい余韻を残す。
TikTokやX(旧Twitter)では日常のワンシーンがたびたび話題になり、10万いいねを超える投稿も。ぬいぐるみや雑貨といったグッズ化、さらには広島銘菓とのコラボレーションも展開され、地元のみならず外のファンまで幅広く愛されるキャラクターに成長中だ。
そんな『ひろくま』(@hirokuma_1690)のクリエイティブディレクター・島村さんと、イラストレーター・おはんさんに、キャラクターや作品のこだわりについて聞いた。
広島県民やみんなに愛されるキャラクターを目指して
ーーひろくまというキャラクターが生まれたきっかけや理由をお教えください。
島村さん&おはんさん(以下、島村、おはん):広島県のファンとなってくれる方々を増やすために、県観光を新たに盛り上げるためのシンボルとして生まれました。
現在は「HITひろしま観光大使」も務めています。https://dive-hiroshima.com/special/tourism-ambassador/
ーーひろくまのお話を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントはありますか?
島村:あえて広島県のPRを全面的にするのではなく、まずはキャラクターとして愛してもらえるように、ひろくまのささやかだけど幸せな日常を切り取ることを意識しています。
ひろくまは、子どもの純粋な心を持っている食いしん坊なキャラクターで、自分のあの頃を自己投影して思い出してもらえるような、そんなキャラクターだと思っています。
おはん:最近ではひろくまと広島に住む人たちとの日常を切り取ったイラストを描くようになりました。ひろくまは広島で生活しているごく普通のクマなので、街に住む人たちから特別扱いされず、当たり前の存在として触れ合っている温度感が魅力のひとつだと考えております。
ーー特に気に入っているお話を教えてください。
島村:ひろくまが雪合戦をしているアニメーション。ひろくまの豊かな日常をどうやったら魅力的に切り取り、多くの方に届けられるかを話し合い、そして生まれたアニメーションでした。ファンの方々からの反応もとても良く、そこが今のひろくまの出発点とも言えるような投稿だと思っております。

おはん:プリンを食べるアニメーションがとても気に入っております。プリンをスプーンですくった時にプリンの揺れに合わせてルンルンと横に揺れるひろくまの動きがとても愛おしく、ひとりで幸せな時間を噛み締めている姿を「こういう時間って大切だよね」と多くの人に共感していただけたのがとても嬉しかったです。

ーーもちもちとしたひろくま、しろくま、犬などキャラクターのビジュアルや動きがとても愛らしいですが、このフォルムや動きは、どのようにして生まれたのでしょうか。
おはん:広島のグルメを堪能する姿を重ねるごとに、もっちりとしたビジュアルに磨きがかかっていったと思います。
特にアニメーションを描くようになってからは、食べながら揺れたり両手をパタパタしたりと身体全体を使って食への喜びが伝えられるようになったので、よりフォルムが食べることに夢中そうなもちもちフォルムへと仕上がっていきました。
ーー日常の何気ない一瞬や感情が描かれているのが印象的ですが、そうしたシーンを描かれている理由をお教えください。
おはん:ひろくまというキャラクターに、より強い親近感を覚えていただけるように日常の中に潜む何気ない一瞬を切り取っています。
特に「さっきお米炊いとけば今頃ご飯食べれたのにな」はお気に入りです。ひろくまの表情にお米を炊かなかった後悔と、でももう炊く気力ないし……お腹は空いてるし……みたいな虚無感が一枚絵の中に詰まっていて、親密な気持ちにさせられます。

ーー夜の街や薄暗い空間で、ひろくまがぼんやり過ごしたり、だらけたりする場面がよく登場します。こうしたシーンを取り入れている理由や、描かれる上でのこだわりを教えてください。
おはん:深夜に部屋の中でカップラーメンを食べるアニメを作った時、散らかった部屋のリアリティと薄暗い夜の時間帯が、ひろくまを際立たせるという気づきを得ました。
一見すると孤独で寂しく見えるのですが、ひろくまの仕草や表情に注目すると、その時間をとても楽しんでいるという健気さを、ひろくまの魅力の一つとして取り入れております。
ーーひろくまを通じて描きたいこと、伝えたいことはどんなことですか。
島村:ひろくまはまるで「広島県民やファンの方々みんなにとっての、親戚の子ども」のような存在になれたらと思っています。
みんなが見守りたくなるような、そんな存在としてひろくまが愛されていき、結果としてひろくまが暮らしている広島という街や、広島に住んでいる人々のことまでも好きになってもらえるようなれたらと思っています。
ーー今後描いてみたいエピソードはありますか。
島村:ひろくまと広島県との関わりをもっと豊かに描いてみたいと考えています。実際に存在する飲食店や公共施設、観光名所など、様々な場所に実際にひろくまが訪れ、そしてそこに行けばひろくまの存在が感じられるように。ひろくまならではの魅力として、地元との関わりを豊かにしていきたいと考えています。
おはん:ひろくまのお友達たちの掘り下げをしてみたいですね。ひろくま(小)、よく似た犬、しろくまというキャラクターがいるので、この子たちにもフォーカスしてより魅力的なキャラクターへと育てていきたいです。

ーー今後の展望や目標を教えてください。
島村:まずはもっと地元の方々にも愛してもらえるような存在になっていきたいと思っています。そのためにも現地の様々な方々とひろくまのコラボレーションを実現し、「広島と言ったらひろくまだよね!」と皆に思ってもらえるようになっていきたいと考えています。
そして広島を訪れた県外のファンの皆様にも、よりひろくまの存在が身近に感じられるようにしていけたら嬉しいなと思っております。
ーー作品を楽しみにしている読者の方々へメッセージをお願いします。
おはん:ひろくまを応援していただきありがとうございます。SNSでひろくまで検索すると、ひろくまのぬいぐるみをおめかしして広島のいろんな場所へ連れて行ってくれている様子を拝見します。その繋がりに私自身も大変励まされ、ここまで作品を作り続けることができました。
これからもひろくまというキャラクターとファンの皆さんとともに、広島の魅力をたくさん伝えていきたいと思います。
島村:いつもひろくまの日常を見守って頂きありがとうございます。これだけ多くの方々にひろくまを愛して頂けるなんて、生まれたばかりの頃には考えられなかったほど、毎日たくさんの皆さんの応援を見て励まされております。
これからも地道に様々な角度を通じて、ひろくまの魅力と、そして広島の魅力を皆さんに届けていきたいと思いますので、引き続き暖かくひろくまを見守って頂けたら幸いです。
取材・文=ネゴト / fumi