『カッコウの許嫁』アニメ2期&連載5周年!作者・吉河美希が語る見どころと、新登場ヒロイン・望月あいの魅力とは?【インタビュー】

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公開日:2025/9/16

振り回すのはヒロインだけじゃない⁉︎ 治外法権の主人公・凪

©吉河美希・講談社/カッコウの許嫁製作委員会2

――今年で連載5周年を迎えられましたが、連載が続く中で描きやすいと感じるキャラクターや、逆によく振り回されると思うキャラクターはいますか?

吉河:基本的にヒロイン4人にはいつも振り回されていますね。本当に全員に振り回されっぱなしです(笑)。大変……でも大変とは思っていないかなぁ。

――まるで凪のようですね。吉河先生自身も振り回されているという。

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吉河:本当にそうですね。でも、凪も意外と女子たちを振り回しているんじゃないか?と、2〜3年前から思い始めました。「こいつもこいつで一体何なんだ⁉︎」って(笑)。

 凪は主人公なので本来はヒロインの相手役という立ち位置なのですが、彼もなかなか頑固なところがあって。例えば、不誠実なことはしないし、その場のノリで取り繕うようなこともしない。だからこそ、平気で場の空気を壊すし、人があまり言わないこともバーンと言ってしまう。その結果、ヒロインたちも彼に振り回されているんですよね。それに、凪はヒロイン4人に対して、それぞれ態度を変えているんですよ。

――言われてみればそうですね。話し方はもちろん、向ける眼差しもヒロインによって全く違います。

吉河:アニメで凪を演じている石川界人さんも、意識しているのか無意識なのかは分かりませんが、ひろにはたまに敬語を使ったり、落ち着いた口調で話したり、ライバルとして「負けたくない」という気持ちもにじませているように感じます。エリカに対しては「この人、何なんだろう?」というやや呆れたような距離感でやり取りしている印象です。つまり、ヒロインごとに接し方を微妙に変えて演じられているんですよね。

 そういえば以前、アニメの特番で、エリカ役の鬼頭明里さんが「凪くんはこの作品の治外法権だからね!」と仰っていて、まさにその通りだなと思いました(笑)。態度の使い分けもそうですし、時には物語をひっくり返すようなこともする。やっぱりこの作品の核を握っているのは凪なんだと感じます。

――そう考えると、一筋縄ではいかないのはヒロイン4人だと思っていましたが、むしろ凪のほうが難しそうですね。

吉河:一方で、描きやすいのは海野家の洋平と奈美恵。二人は本当に変わらず、素のまま生きているキャラクターなので、いつ会っても同じ迎え方をしてくれるし、何かあっても朗らかに一蹴してくれる。ちょっと抜けているところもあって、憎めない両親です。

 変わらないからこそ、描くときも「このキャラは本当はこんなことを思っているから、こう言っているのかな?」と余計な推測をする必要もない。言っていることと考えていることが違うタイプではないので、そういう意味で海野家の両親はすごく描きやすい存在ですね。

意識しているのはキャラクターの“リアリティ”

――魅力的なヒロインやその家族など、個性豊かなキャラクターがたくさん登場しますが、吉河先生は普段、彼らとどんなふうに向き合っているんですか?

吉河:あまり漫画やアニメの“二次元の子たち”という感覚では見ていないんですよね。私にとっては、そこに生活している“人”として向き合っています。それこそ何気ない雑談のシーンでも、ただ会話をさせるのではなく「こういう状況でこの話をしていたら、この子はこんな動きをしながら話すんじゃないか?」と、仕草や行動まで想像します。

 そもそも、高校生2人が一軒家で同居するなんて、現実的にはかなり難しい設定です。でも、だからといって描く時に「漫画だからいいじゃん」と一蹴しないようにしています。現実なら、毎日のご飯作りや洗濯は大変ですし、その上で学校やテスト勉強もある。それをどう成立させるかを裏でしっかり設定しているんです。

 例えば、エリカのお父さんが生活費をカバーしていて、週1〜2回はシッターさんやお手伝いさんが掃除に来ている……。凪は料理ができるし、エリカの部屋は汚いままでも掃除が入るから限界は超えない。そうした背景を、セリフや何気ない描写の中に忍ばせています。

 もしかしたら、生活感よりもお色気を!という方向にを期待されるかもしれません(笑)。もちろん見せるべきところは見せつつ、日常や生活感も描き込むことで、キャラクターの人間性が立ち上がると思っています。“二次元キャラ”というよりも、人間臭さや生活している姿がふと見えるような存在として描くことを意識していますね。

――なるほど。だから食事のシーンもすごくリアルなんですね。みんなでカツ丼を食べる場面や、シンクに食器が溜まっていく描写など、日常の細部まで描かれているので、ふとした瞬間に本当にここに暮らしているんだなと思わせられます。

吉河:そうですね、まさに生活感を出すために、あえて描かなくてもいいような、食器を洗っているシーンなども入れるようにしています。それに、この作品はラブコメですが「同居もの」というテーマを掲げて立ち上げた作品でもあります。生活を描くうえで食事はとても大事だと思っていますし、だからこそ調理するところや食べ物が登場するシーンは、絶対に気合いを入れて描こうと最初から決めていました。

©吉河美希・講談社/カッコウの許嫁製作委員会2

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