『カッコウの許嫁』アニメ2期&連載5周年!作者・吉河美希が語る見どころと、新登場ヒロイン・望月あいの魅力とは?【インタビュー】
公開日:2025/9/16
恋も表現も、これまで以上に踏み込むために。
――これまでにも『ヤンキー君とメガネちゃん』『山田くんと7人の魔女』など、数々のラブコメヒット作を手がけてこられましたが、連載5年目を迎えた今、『カッコウの許嫁』は、ご自身のキャリアの中でどんな挑戦や転換点になったと感じますか?
吉河:これまでの作品もラブコメではあるのですが、ここまで“恋愛”を物語の軸に据えて描くのは意外と初めてだったと気づきました。もちろん家族的な要素も入っていますが、恋愛を真正面から描くという意味では、自分にとって新しい挑戦になったと思います。
あとは表現の面でも大きな転換点でした。デビュー当時からずっとアナログ派で、Gペンでカリカリ描き、トーンを貼って削って……という作業を続けてきましたが、『カッコウの許嫁』からは思い切って全てデジタルへ移行しました。今となっては「Gペンって何でしたっけ?」というくらいすっかりデジタルに馴染みましたが(笑)。長年Gペン一本で戦ってきたので、当時それを手放すのはかなり勇気が必要でしたね。でも、長くやってきたし“漫画家人生第二章”だと思って思い切ってデジタルに切り替えたんです。
――『カッコウの許嫁』からデジタルへ移行したのは、何か理由があったのでしょうか?
吉河:週刊連載をこなしながらの移行はなかなか大変なので、『山田くんと7人の魔女』の連載終了後の空白期間に、しっかり勉強して、準備を整えたうえで挑もうと思ったからです。
デジタルに移行してからは、その特性を活かした表現にも挑戦するようになりました。例えばあいのライブシーンに登場する電光掲示板の文字など、アナログでも描けなくはないですが、やはりデジタルのほうが圧倒的に強い。アナログが闇や陰影を得意とするなら、デジタルは光の表現に強いと感じます。
ただ、描き方そのものはあまり変わっていないかもしれません。アナログからデジタルに変わっても、腕の動かし方はほぼ同じ。デジタルなら曲線もスッと引けるし、ツールを使えば綺麗な線も簡単に描けるのですが、私はアナログ時代と同じように、納得のいく線が描けるまで何度も引き直すタイプなんです。違うのは、消しゴムの工程がなくなったくらい(笑)。
5年間ブレずに描き続けたのは、キャラクターの“成長”

――連載が5年目を迎えた今、『カッコウの許嫁』でずっと変えずに大切にしてきたテーマや視点をあげるとしたら?
吉河:常に意識してきたのは“キャラクターの成長”です。それが的確に描けているかどうかはあくまで読者の皆さんの受け取り方次第なので、「成長しています!」と私が断言できる立場ではないのですが。
ただ、それを実感できた瞬間が最近あったんです。アフレコを見学したとき、現在原作は29巻まで出ていますが、収録していたのがちょうど7〜9巻あたりのエピソードで。声優さんの演技や絵コンテを通して当時の物語を見返すなかで、「この頃のキャラクターたちってこんなにキャッキャしていたんだな」と思ったんです。考え方や言動も、なんというか若いなと。
その瞬間、「ちゃんと彼らは成長してきたんだ」と改めて感じることができました。ずっと意識はしていたけれども、ブレずに“成長”というテーマを描き続けられているのかな、と。
――成長といえば、凪やヒロイン3人が参加する学校行事の描写などからも、その歩みや変化が伝わってきますよね。
吉河:高校2年生から始まった物語ですが、その1年間を、実際には約5年かけて描きました。3年生なると当然また変化はありますが、夏のイベントなど学生らしさは残したい。一方で、同じことを繰り返すだけにはしたくないので、新しい要素を加えながらも花火大会のような楽しい行事は外さないようにしています。キャラクターの成長とイベントの新鮮さ、その両立がいつも悩みどころですね。
――特に学園ものだと、文化祭や体育祭みたいにどうしても同じ行事が繰り返されるので、そのたびに新鮮さを出すのはきっと大変ですよね。
吉河:体育祭は去年もあったはずなのですが、凪とエリカが学校行事にあまり積極的じゃなかったこともあって、描写自体を飛ばしちゃっているんですよね。だから28巻でやっと彼らが体育祭に向き合って、参加している姿を描けたんです。
作中では「去年は体育祭出なかったよね」みたいな会話はないですが、読者には「凪ってちゃんとこういう行事に参加するようになったんだ」とか、「エリカも楽しんで参加するようになったんだ」と感じてもらえると嬉しいです。

――ここまで、アニメの見どころから創作秘話まで、たっぷりお話いただきありがとうございました。最後に、先日発売されたばかりの最新29巻の見どころ、そして『カッコウの許嫁』の今後の展望についてお聞かせください。
吉河:29巻では、物語はいよいよ高校3年生の夏休みに突入します。それぞれが将来を考え、決断していく時期ならではの空気感。誰もが一度は経験した「これからどうしよう」という悩みや迷いが、物語全体に流れています。あとは、夏らしい海の家でのエピソードや、久々に宗介が登場する所など見どころは盛りだくさん。奇跡的に季節感が現実とリンクしているので、リアルタイムで読んでいただけるとより楽しめるはずです。
そして、お気づきの方もいるかもしれませんが、5年以上続いた連載もすでに折り返しを過ぎ、物語は最終着地点に向けて跳び立ったというか……。飛び立つスタートラインに向かったところ、そんな段階にきています。ここから私が果たすべき責任は、この作品をきちんと着地させ、終わりまで描ききること。その過程も含めて、ここからは一話も見逃さずについてきてもらえたら嬉しいです。

取材・文=ちゃんめい
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