笑いと共感! 群馬に移住した若者視点で描く、田舎あるあるがギュッと詰まった4コマ漫画『あい・ターン』【書評】
公開日:2025/9/27

近年、都会生まれ都会育ちの人が別の地方で暮らし始める「Iターン」が盛んだ。
『あい・ターン』(おーはしるい/ぶんか社)は、そんな「Iターン」のリアルを綴った作品。田舎暮らしのあるあるを、笑いや温かさと共に4コマ漫画でテンポ良く描いている。
主人公は気弱な独身男性・明。都会を離れ、憧れの田舎暮らしを求めて東京から群馬へ移住する。
しかし、田舎での新生活は決して一筋縄ではいかない。隣人はツンデレ(?)な美女・蕗(ふき)、年齢を感じさせない元気なおばあちゃん・さと、そして蕗の妹・つくしという三者三様の女性たち。彼女たちの振る舞いや、田舎独自の価値観に日々翻弄されながらも、明の田舎ライフはにぎやかに幕を開ける。
夢のような田舎暮らしではなく、実際の大変さをしっかり描いているのが本作の魅力だ。
駅を降りれば何もない、夜7時で最終バスはもうない、車の免許は必須……。このように、田舎暮らしには不便で厳しい側面がある。便利な都会を捨てて移住してきた明は、村人から「変わり者」と呼ばれる。また、実際に田舎暮らしを断念して去っていった人も少なくないという。
しかしそれでも、人と人の温かい関わりや助け合いが息づいているのは事実だ。都会では味わえない結びつきに触れることで、明も次第に地域に馴染み、田舎の暮らしに少しずつ心を寄せていく。
運命を感じ移住してきた場所を、明は不便さも含めてどんどん愛おしく思っていく。彼の奮闘と成長を見守りながら、読者もまた自分自身にとっての居場所や暮らし方について考えさせられるだろう。
作者自身も群馬出身。群馬ならではの方言や地域色がふんだんに盛り込まれ、土地に馴染みのある読者なら思わずうなずいてしまう場面が多いだろう。
笑えて心が温まるIターン物語。読めば田舎暮らしの本質的な魅力が伝わってくるに違いない。
文=ネゴト / fumi