遊んでいそうなのにピュアで真っ直ぐ。色っぽいお兄さんのギャップがまさに沼。両片思いから始まる癒やしのラブコメ『あやしい癒しの八雲さん』【書評】
公開日:2025/9/22

『あやしい癒しの八雲さん』(綾野六師/KADOKAWA)は、「いかにも遊んでいそうなお兄さん」が醸し出すギャップにキュンとする、じれったいラブコメ漫画。もどかしくも甘酸っぱい恋模様が、丁寧な筆致で描かれている。
料理屋で働く「あやしいお兄さん」こと八雲は、胡散臭い糸目に色っぽい和服姿で、いつも煙管をくゆらせている。ヒロインの比奈は、出勤中に顔を合わせる彼にひそかな憧れを抱いていた。
いかにも胡散臭くて遊んでいそうな出で立ちの八雲。しかし実際の彼は、恋愛にとんでもなく不慣れなお兄さんだった。
比奈がうっかり口走ってしまった「今日も好きです」という言葉に顔を真っ赤にし、ほんの少し手が触れただけでも硬直するほど「ピュアなお兄さん」八雲。
その真っ直ぐで愛情深い人となりに、恋愛に後ろ向きだった比奈の気持ちも少しずつ大きくなっていく。
本作の魅力は、思わず「尊い……!」と叫びたくなる八雲のギャップだ。中でも、八雲が照れたときに見せる笑顔はとびきり愛らしい。どこか浮世離れした佇まいとの落差に、読者の心もくすぐられること間違いなしだ。
また、八雲のピュアな反応に翻弄される、比奈の素直な言動からも目が離せない。ふたりのやり取りには甘酸っぱさがあふれ、終始癒やしの空気に包まれている。最後の1ページをめくる頃には、「もっとこのふたりを見守っていたい」と思わされるだろう。
シリーズ第2巻では、比奈と八雲の「友達以上恋人未満」な関係が温かいタッチで描かれる。過去の経験から「恋人」という関係に踏み出しきれない比奈が、八雲にどう向き合うのか。そして、八雲が比奈に寄せる想いの深さはどれほどなのか。胸キュン必至の見どころが満載だ。
ふたりの温かく優しい物語を、心ゆくまで堪能してほしい。