セリフのない漫画が伝える、大切な人を思う尊さ。”食べる、食べられる”関係のウサギとニンジンの友情に、あなたはどんな感想を持つ?【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/9/23

 かわいいウサギとニンジンのキャラクターが主役の、セリフのない2コマ漫画『ラビとキャロ』。一見すると、ほのぼの癒やし系かと思うが、実は違う。無表情なウサギ・ラビと、逆に感情表現が豊かなニンジン・キャロは「食べる、食べられる」関係にありながらもお互いを思い合う大切な友達で、時には自分を犠牲にしてでも相手が喜ぶことをしてあげたり、助けてあげたりする。

 友達への優しさと愛情、そしてたまに切なさも込めて描かれる各エピソードはセリフや説明がないぶん、キャラクターが持つ「思い」を自然と想像させ、読み手それぞれに、自分だけの感想を持たせる作品だ。

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 X(旧Twitter)で投稿されるたびに共感や考察などを交えた感想が集まり、10万いいねを超えるエピソードも。

 そんな『ラビとキャロ』の作者・にちにち(@nichinichi_369)さんに、創作のきっかけやこだわりについて聞いた。

セリフがないのは、いろいろな解釈をしてもらいたいため

ーー『ラビとキャロ』を創作したきっかけや理由を教えてください。

 SNSに作品を投稿する中で、「どうすれば一瞬で人の心に届くキャラクターをつくれるのか」をずっと考えていました。その答えのひとつが「食べる・食べられる」というシンプルで直感的な関係でした。

 特にウサギとニンジンは誰もが知っている組み合わせでありながら、その中に愛情やユーモア、切なさなど、多くの物語を込めることができると感じたんです。そこから自然と『ラビとキャロ』は生まれました。

ーー本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントはありますか?

 まず「言葉がなくても伝わる」ことです。子どもから大人まで、文化や言語を超えて感じてもらえるよう、キャラクターの表情や動き、コマの間の余白にこだわっています。

 見る人によって「切ない物語」にも「ユーモラスな小話」にも見える、そんな多層的な解釈ができる余地を残すことを意識しています。

ーー特に気に入っているお話を教えてください。

 割引シールが貼られたキャロを、ラビが水をあげながら助けるエピソードがお気に入りです。日常で目にする割引シールが物語の小さなスパイスとして効き、これまでの展開とはひと味違う空気を生んでくれました。これからも、日常の断片を物語に溶け込ませながら、描き重ねていきたいと考えています。

ーーどこまでもラビに献身的なキャロですが、この関係やエピソードの着想はどのような経験や思いから生まれていますか?

 日常の中で「無条件に誰かのために動く姿」に強く心を打たれる瞬間があります。親が子を思う気持ちや、友人のさりげない優しさ。そうした「ちいさな献身」が、キャロのキャラクターの土台になっています。

 命をかけるほど大げさに描いてはいますが、根底には「大切な誰かを想う気持ち」が流れています。

ーー怯えたり悲しんだりと表情が豊かなキャロと、あまり表情の変わらないラビの対比が印象的です。キャラクターを描く上で意識していることを教えてください。

 感情を動かす役割はキャロ、受け止める役割はラビ——この対比を大切にしています。キャロの表情が豊かであるほど、ラビの静かな存在感が際立ちます。ふたりの温度差があることで、見る人が感情移入しやすくなり、物語に奥行きが生まれると考えています。

ーー本作を通じて描きたいこと、伝えたいことはなんですか?

「見方を変えれば物語は違って見える」ということです。「食べる、食べられる」という一見残酷な関係も、愛や優しさ、ユーモアに変わるかもしれない。人によって解釈が変わる余白を残すことで、それぞれの心の中に「自分だけの物語」を生んでほしいと思っています。

ーー今後、どんなエピソードを描いてみたいですか?

 ラビとキャロが人間社会にもっと踏み込んでいくエピソードを描きたいです。

 例えば「スーパーでの買い物」「運動会に出場する」など、彼ららしい視点で日常を切り取ると面白いのではと思っています。また、ちょっとした哲学的なテーマ「時間」「夢」「別れ」などにも挑戦してみたいです。

ーー今後の展望や目標を教えてください。

 言語や文化を超えて、多くの人に届く作品を目指しています。

『ラビとキャロ』が海外の人にとっても共感できる存在になり、世界中で「かわいい」「切ない」「面白い」といった感情を共有できたら最高に幸せです。いずれは絵本やアニメなど、さまざまな形で表現の幅を広げたいと考えています。

ーー作品を楽しみにしている読者の方々へメッセージをお願いします。
 
 ラビとキャロは、どんなときも一緒にいます。切なくても、ちょっと笑えても、そこには必ず、ふたりでいる幸せがあります。読んでくださる皆さんの心に、少しでも温かい気持ちや笑顔が届けば嬉しいです。これからも見守っていただけたら幸いです。

取材・文=ネゴト / fumi

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