放置子とのトラブルに巻き込まれてしまった――親はどう対応すべき?【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/9/27

 親からの愛情を受けられず、寂しい気持ちを埋めるように友達の家に居座ったり、友達の親に執着したりする「放置子」。セミフィクション漫画『放置子の面倒を見るのは誰ですか?』(白目みさえ/KADOKAWA)では、新1年生の莉華が入学説明会で放置子の“りっちゃん”に出会い、トラブルに巻き込まれていく様子が描かれている。

 莉華の母親・しずかは不安定なりっちゃんをサポートしようとするが、娘が彼女から意地悪をされている事実を知って避けるように…。放置子に依存された親子のモヤモヤが「今まさに放置子に悩まされている」「周りにこういう子がいる」という人たちの共感を呼んでいる。放置子に限らず、子どもの友達関係や「いじめ」に悩む人にも刺さるものがあるはずだ。著者は、臨床心理士・公認心理師の資格を持ち、精神科に勤める現役心理士の白目みさえさん。スクールカウンセラーの経験もある著者が、トラブル時の学校への相談の仕方や、そこから一歩進んだ加害者側の支援について紹介しているのも本書の見どころだ。インタビューでは、本作にまつわるエピソードのほか、子どもの友達に対して親が抱きやすい悩みについても聞いてみた。

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――放置子のりっちゃんは「これまでに出会った子を総合したキャラクター」だそうですね。どのように人物像を作っていきましたか?

白目みさえさん(以下、白目):娘たちの周りにいる実際の友達や、友人から聞いたエピソード、そして私が子どもの頃に「親の姿が見えなくて、よくひとりで過ごしていた子」などを思い出しながら形作りました。そうした子どもたちは、大人には誰彼かまわず甘えに行く一方で、同年代同士では仲良くしていたと思ったら急に意地悪になるなど、不安定さを抱えていることが多かったように思います。そうした断片的な要素をつなぎ合わせて、「どこにでもいるかもしれない子」として描きました。心理士としての相談経験も重ね、子どもが抱える孤独や戸惑いを少しでもリアルに描きたいと思いました。

――りっちゃんの保護者は、漫画の中に一度も出てきません。父子家庭で、お父さんは昼間働いているから入学説明会にも来られない…という設定でしたが、父子家庭を題材にした理由とは?

白目:放置子とされる子どもたちには、ひとり親家庭、仕事をする両親が家にいる時間が少ない、家庭不和や虐待があって「家が落ち着かない」など、さまざまな背景があります。私が子どもの頃、近所にひとり親家庭の子がいたのですが、その子はお父さんの仕事が忙しいのでどうしても子どもに目が行きにくく、おばあちゃんに任せきりになっていました。そうした状況の中で子どもが抱える孤独や不安を描きたいと思い、この設定を選びました。

――もし放置子の親に会えた場合、白目さんなら、お子さんの抱える問題の原因が家庭にあることを伝えますか?

白目:心理士ではなくひとりの親として対応するなら、直接は指摘しないと思います。心理士としても、そこまで直接的な言い方はしませんが…。私自身も相手も保護者であり、対等な関係。相手の育児や生活のスタイルを指摘したり、矯正したりする権利はありませんので。こちらの要望や不満を伝えることはあっても、それ以上はないと思います。困っている様子なら、相談機関を紹介することはできますが。

 もしかすると、その親はすでに自分の状況を理解しつつ、一生懸命に子育てをしている状況かもしれません。そこで「問題がある」と突きつけても解決にはならず、むしろ不満が子どもに向かってしまう危険すらあります。心理士の現場でそうした現実を何度も見てきたからこそ、安易に親を責めることはしないと思います。

取材・文=吉田あき

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