友達の家に約束なしで夕方まで入り浸り、夜遅くまで出歩く… “放置子”を見かけたときの対応を心理士が語る【著者インタビュー】
公開日:2025/9/28

親からの愛情を受けられず、寂しい気持ちを埋めるように友達の家に居座ったり、友達の親に執着したりする「放置子」。セミフィクション漫画『放置子の面倒を見るのは誰ですか?』(白目みさえ/KADOKAWA)では、新1年生の莉華が入学説明会で放置子の“りっちゃん”に出会い、トラブルに巻き込まれていく様子が描かれている。
莉華の母親・しずかは不安定なりっちゃんをサポートしようとするが、娘が彼女から意地悪をされている事実を知って避けるように…。放置子に依存された親子のモヤモヤが「今まさに放置子に悩まされている」「周りにこういう子がいる」という人たちの共感を呼んでいる。放置子に限らず、子どもの友達関係や「いじめ」に悩む人にも刺さるものがあるはずだ。著者は、臨床心理士・公認心理師の資格を持ち、精神科に勤める現役心理士の白目みさえさん。スクールカウンセラーの経験もある著者が、トラブル時の学校への相談の仕方や、そこから一歩進んだ加害者側の支援について紹介しているのも本書の見どころだ。インタビューでは、本作にまつわるエピソードのほか、子どもの友達に対して親が抱きやすい悩みについても聞いてみた。
――「放置子」に振り回されている家庭は意外と多いようです。白目さんが考える放置子とは、どんな子を指しますか?
白目みさえさん(以下、白目):特別な子どもを指す言葉ではなく、親が病気や仕事などで子どもに目が届きにくくなっているなど、どの家庭でも起こりうる状況の中で、子どもが安心やつながりを求めて行動している姿だと思います。たとえば友達の家に長く居続けてしまったり、別の家族の大人にしつこく甘えに行ったりするのは、困らせたいからではなく「誰かと一緒にいたい」という気持ちの表れではないでしょうか。
――そう考えると切ない気持ちになります。娘さんの周りにも「放置子」のような子がいるそうですが、どんなことに悩まされていますか?
白目:「放置子」と呼べるかどうかわかりませんが、「あの子ちょっと気になる」という噂を耳にしています。小さいうちは、友達の家に事前の約束なしでピンポンして夕方まで入り浸ったり、夏休みに毎日「プール行こう」と誘い続けてきたりとか…。年齢が上がると、暇を持て余して公園に出て、中学生のヤンチャな子たちとつるんで夜遅くまで歩き回る、良くない遊びを覚えてしまう、といったこともあると聞きます。
そうした行動が現れる前に、支援の手が届けば…と思います。周囲からの報告や相談があると支援者としても動きやすくなるので、気になったら然るべき機関に連絡をしてもらうのがいいと思います。
――放置子は昔からいたようにも思いますが、最近また注目されているのはなぜでしょう。
白目:昔は近所の子ども同士が自然に関わり合うことが多く、「放置子」は今ほど珍しい存在ではなかったように思います。ただ、地域のつながりが薄れた現代では、そうした子どもの姿が「問題」として目立ちやすくなっていますよね。
それに、いざ自分が子育てをしてみると、子どもにGPSを持たせる、必ず送迎するなど、子どもの安全に関する常識が大きく変わっていることにも気づきました。一方で、地域の見守りや近所同士のつながりは薄くなり、結局は親がすべて気を配らなければならない状況。そうなると、しっかり対応できる家庭と、そうでない家庭との間で差が開きやすい。そういったことも「最近増えている」と感じられる理由の一つかもしれません。
取材・文=吉田あき