発達障害か、愛情不足か、経験不足か… “放置子”の漫画が「うちの近くにもいる」「今まさに悩まされている」と反響【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/9/30

 親からの愛情を受けられず、寂しい気持ちを埋めるように友達の家に居座ったり、友達の親に執着したりする「放置子」。セミフィクション漫画『放置子の面倒を見るのは誰ですか?』(白目みさえ/KADOKAWA)では、新1年生の莉華が入学説明会で放置子の“りっちゃん”に出会い、トラブルに巻き込まれていく様子が描かれている。

 莉華の母親・しずかは不安定なりっちゃんをサポートしようとするが、娘が彼女から意地悪をされている事実を知って避けるように…。放置子に依存された親子のモヤモヤが「今まさに放置子に悩まされている」「周りにこういう子がいる」という人たちの共感を呼んでいる。放置子に限らず、子どもの友達関係や「いじめ」に悩む人にも刺さるものがあるはずだ。著者は、臨床心理士・公認心理師の資格を持ち、精神科に勤める現役心理士の白目みさえさん。スクールカウンセラーの経験もある著者が、トラブル時の学校への相談の仕方や、そこから一歩進んだ加害者側の支援について紹介しているのも本書の見どころだ。インタビューでは、本作にまつわるエピソードのほか、子どもの友達に対して親が抱きやすい悩みについても聞いてみた。

advertisement

――本作には多くの反響があったと聞いています。読者はどんな場面に反応している様子でしたか?

白目みさえさん(以下、白目):多かったのは、「こんな子、身近にもいる」「自分の子ども時代にもいた」「まさに今悩まされています」という声でした。主人公の母親が困って、ひとりで抱え込まずに学校の先生やスクールカウンセラーに頼る場面では、「自分も相談してみようと思えた」「ひとりで抱えなくてもいいと気づけた」という感想もありました。心理士としても病院で「ひとりで悩まないで」と日々思っていますが、その声はなかなか届かないので、作品を通して少しでも伝わったのなら、とてもうれしく思います。

――心理士として受ける子どもの相談には、どんな悩みが多いですか?

白目:
1.ASD・ADHDなど、発達障害に関する理解や対応
2.不登校や集団に馴染めないなど、学校生活の困難
3.気分の落ち込みや体の不調に表れるストレスなど、心身の不調
4.ひとり親家庭、虐待、家が落ち着かないなど家庭環境に関する心配

 このような相談が多い印象です。

 家庭環境については、親御さん自身より、学校の先生や周囲の大人から「心配だ」という形で相談が寄せられることが少なくありません。

――りっちゃんが相手の気持ちを理解できないのは「発達障害か、愛情不足か、経験の不足か…」と推測する場面があります。実際、放置子はそのどれかに当てはまることが多いのですか?

白目:「どれか」であることもあれば、「どれも」であることも、「どれでもない」こともあります。放置子とされる子どもの背景は一様ではなく、発達障害・愛情不足・経験の不足といった要因が複雑に重なり合っていることが多いようなので。たとえば発達障害があったとして、ルールをしっかり守れる子なら、むしろ放置子になりにくいかもしれません。逆に、特別な診断がなくても、家庭の事情や関わりの少なさから孤独を深めることもあります。子どもをひとつの理由で括ることができないからこそ、その行動の背景を丁寧に見ていく必要があると思います。

取材・文=吉田あき

あわせて読みたい