幸せはありふれた毎日の中にある。等身大の家族の幸せを自然体で描いた大人気コミックエッセイ『チリもつもれば福となる つもりつもって大騒ぎ』【書評】

マンガ

公開日:2025/10/19

チリもつもれば福となる つもりつもって大騒ぎ』(チリツモル/KADOKAWA)は、2児の母である著者・チリツモルさんが送る大人気家族コミックエッセイの第2弾。

 日常のちょっとした出来事をユーモラスに切り取った本作は、個性的なエピソードの数々が話題を呼び、SNSでは「癒やされる」「クスッと笑った」との感想が相次いだ。

advertisement

 本作では、夫とふたりの子と暮らす著者のにぎやかな日常が温かみのある優しいタッチで描かれる。登場するのは、どんなに雑に扱われてもめげない家族想いの夫。クールだけど優しい長男くん。可愛くて一番変人の次男くん。そして幸せすぎると変顔になってしまう著者。ユニークな家族が織りなす日々は、驚きと笑いの連続だ。

 デパートの室内遊園地で、少し年上の子にやたらと可愛がられる次男くん。そんな様子を微笑ましく見守る著者の姿に、読者側も思わず頬が緩む。また、「パパとおにぎりどっちが好きかな~?」と長男くんに問いかけたところ、「ママ!」と即答され、ショックを隠せない夫のリアクションも何とも独特で面白い。

 エピソードの一つひとつは、ごく普通の日常のひとコマにすぎない。けれど、言葉や表情のやりとりにはすべて、家族ならではの絆や温もりがしっかりと宿っているのだ。

 家族の時間の過ごし方や幸せの形は、それぞれの家庭によって大きく異なる。家族全員が揃って食卓を囲む習慣を大事にする家もあれば、休日のレジャーを共有することで絆を深める家もあるだろう。また、家族内だけで通じる冗談や合図、暗黙のルールを大切にしている家庭もあるはずだ。そうした独自の文化や小さな習慣の数々が、家族の絆を形作っている。

 本作を読み進めるうちに、自分自身の家族との思い出や、他愛ない日常の尊さにあらためて気づかされるだろう。笑って、共感して、読み終えた後に自分の家族の姿を思い返したくなる、そんな幸せがぎゅっと詰まった1冊だ。

文=ネゴト / 糸野旬

あわせて読みたい