家から出られずゴミ出しできない。ゴミ屋敷の住人だった女性は人生をリセットできるのか。壮絶な現場を片付けていく清掃会社のリアルを描く【書評】
公開日:2025/10/10

「ゴミ屋敷の片付け動画」なるものをご存じだろうか。『ゴミ屋敷専門パートナーズの現場日報 レベルMAXの人生お片付け』(ゴミ屋敷専門パートナーズ:監修・著、もづこ:漫画/KADOKAWA)は、大人気YouTube「ゴミ屋敷専門パートナーズ」の動画をもとにコミカライズされた、リアルお片付けストーリーだ。
就職したものの、毎日深夜に帰宅し朝はギリギリに出社する生活で心を病んでしまった千絵美。家から出ることができず、ひとり暮らしの部屋はゴミ屋敷になってしまった。
人生に行き詰まった千絵美を救ってくれたのは、清掃会社「ゴミ屋敷専門パートナーズ」だった。
清掃依頼したことをきっかけに「パートナーズ」でアルバイトを始めた千絵美だが、清掃現場は想像以上に壮絶なものばかり。ゴミ屋敷になってしまった依頼主に寄り添い、丁寧に片付けをしていく仲間を目の当たりにし、彼女が少しずつ成長していく姿が描かれる。
山となった不用品の数々。ゴミが積もりすぎてガチガチの層になってしまった床。おぞましい数の虫。
どうしてこんなことになってしまったのだろう……。ゴミ屋敷の現場を見れば、多くの人がそう疑問に思うはずだ。しかし、仕事や病気といった誰にでも起こりうることがきっかけだったと知ると、他人事ではないと思わされる。彼らが片付けによって光を見出す姿に思わず胸が熱くなってしまう。
千絵美は「パートナーズ」の社長たちと過ごすうちに、仕事にやりがいを感じるようになっていく。清掃業に対する周囲の偏見や思い込みに心が揺れ動くことはあるものの、心から楽しいと思える仕事に出会えた喜びを勇気に変え、避け続けていた両親と向き合う気持ちも芽生えはじめ…。ぜひ、千絵美の成長も見届けてほしい。
本作の特徴は依頼主の背景や思いが描かれるだけでなく、掃除のノウハウがことこまかく紹介されている点にある。すでに動画を見た人にも新たな気づきがあり、楽しめるはずだ。読むと部屋だけでなく心も整う1冊である。
文=ネゴト / Ato Hiromi