人の心や未来が分かるお人好しな薬屋と、女嫌いな騎士の恋模様。お互いに秘密を持つふたりのじれったい初恋ストーリーに、キュンキュンが止まらない!【書評】
公開日:2025/10/15

『占い師には花騎士の恋心が見えています』(Mikura:原作、裕上ハツ:漫画/キルタイムコミュニケーション)は、お人好しな薬屋と、プレイボーイなのに実は女嫌いな騎士が織り成すピュアなラブストーリーだ。
薬屋を営むシルルは、他人の頭上に現れる不思議な線から、その人の感情やおおよその未来を読み取ることができる。彼女の助言や忠告はよく当たると評判になり、いつしか街では「占い師」と呼ばれるようになっていた。ある日、シルルは花の騎士・エクトルに訪れる危険を察知して助けたことで、彼に興味を持たれてしまう。
怪我の後遺症の痛みを隠し、本音と逆のことを言いながら距離を詰めようとするエクトルと、魔法使いの血を引いていることを隠して生きているシルル。それぞれにワケアリなふたりは、少しずつ心の間合いを縮めていく。初恋の瑞々しさが丁寧な心情描写で真正面から描かれており、ふたりのじれったい掛け合いや小さな思いの変化の積み重ねが、読者の胸に温かく残る。
シルルの能力はその人の未来や気持ちを完全に見通すことはできない。例えば、恋をしていることは分かるが、その相手が誰なのかまでは分からないのだ。シルルと一緒に過ごすうちに無自覚に初恋を募らせていくエクトルと、彼の恋の感情が自分に向いているとは思っていないシルルのピュアな姿はとても微笑ましい。
そして本作に感情移入してしまうもうひとつの魅力は、シルルの目を通した世界の描き方にあると思う。彼女が読み取るエクトルの本当の感情と、彼が実際に表に出す感情を対比させる描写が印象深く、エクトルの本心と建前の落差、それを読み取るシルルの心情が臨場感をもって描かれていることでふたりからどんどん目が離せなくなっていく。
真っ直ぐなときめきを味わいたい人、ピュアな恋模様にキュンとしたい人はぜひ手に取ってほしい。ページをめくるたびに心が甘酸っぱい気持ちで満たされていくだろう。