Aぇ! group・正門良規主演ドラマで話題! 10歳年上のお姉さんに10年恋し続けた青年の切ない想い【書評】
公開日:2025/10/23

片思いは楽しい、好きな人が近くにいるのは幸せなことだ。だが、全く相手にされないまま長く温め続けてきた片思いはしんどい。報われず、やめることもできないまま、呪いのように自分を縛り続ける。この複雑で切ない気持ちは、片思いをしている者同士にしか共有できない。『ムサシノ輪舞曲』(河内遙/祥伝社)は、そんな片思いのしんどさにそっと寄り添ってくれる物語だ。
蕎麦屋の息子・阿川龍平(25)は、“お隣のお姉さん”である武蔵原環(35)に、小さな頃から片思いしている。十代半ばで告白もしたけれど「家族同然の弟あつかい」な上に「10歳差」のせいで意識してもらえず、この10年、もはや諦めモードだった。そこへ突然、とぼけた色気の食えないテーラー・衣笠が環の前に現れ、恋が始まろうとしていた。“執着系片思い男子×惚れっぽい自然体女子×食えない男”が織りなす、大人のじれったい三角関係。2025年春にドラマ化され、最新第5巻が2025年7月8日に発売された。
10歳の年の差が、龍平の心を蝕んでいく。環と同世代の衣笠の存在が不安でたまらない日々。そんな龍平をよそに、環と衣笠の距離は縮まっていく。だが衣笠は、環に対して恋とはまた違う欲望を抱いているのだった。
ライバルの登場をきっかけに、龍平はこれまで以上に環へ積極的にアプローチしていく。これまで弟のように思っていた龍平の想いが本気だと知り、環の心にも少しずつ変化が芽生え始める。
学生時代の片思いとは違い、大人の片思いには様々な感情が入り混じる。年を重ねたからこそ、自分の人生を委ねたい相手かを見極めたくなるのだ。将来を見据えて恋に妥協する人も多い中、純粋な気持ちで相手を思い続ける龍平に、昔の恋や今でも封じている誰にも言えない片思いを重ねる人も多いだろう。今、片思いのまっただ中にいる人。忘れられない恋に胸を痛める人。そんな人にこそ読んでほしい一冊だ。
文=ネゴト / くるみ