『会長はメイド様!』著者の最新作! 猫アレルギーの少女が、猫になったクラスメイトの面倒を見るラブコメ漫画【書評】
公開日:2025/10/3

「ある朝目が覚めるとそこには、猫耳が生えたクラスメイトが眠っていました」――という言葉から始まるのが『猫にワガママ』(藤原ヒロ/白泉社)。世話焼きな女子高生がある日、夜になると猫化するクラスメイトと遭遇。同居することになるという、青春要素あり、謎解き要素もありのラブコメディだ。
主人公・小松崎凛はちょっとお節介。老舗製菓会社の御曹司であるクラスメイト・橘くんのお昼がいつもコーンポタージュ一缶のみであることが気になり、「ちゃんとご飯たべなきゃ」と声をかける。そんな凛を橘くんは「今日も超ウザい」と完全拒否。それでも凛は「食べることは生きること」と橘くんへの接触を諦めない。


そんな凛が気にする対象は人のみにあらず。猫アレルギーを持っているのにもかかわらず、近所の神社に集まる野良猫の様子を毎日見に行っているのだ。ある日、凛はそこで衰弱した猫を発見。思わず触ってしまったものの猫アレルギーは現れず、喜びと心配でその猫を自宅に連れて帰る。今まで触りたくても触れなかった猫に触れる……感動の一夜を過ごし目覚めると、そこには猫耳かつ一糸纏わぬ橘くんが――。



犬系女子×猫系男子=相性抜群!
クラスメイトから「気軽に話しかけられない」と思われるほど不愛想だけど、凛が困っていたら助けてくれる。でも仲良くなったと思ったら、次はまた塩対応……。そんな橘くんは、猫に変身する前からかなり猫系男子。一方の凛は学校でも友人に囲まれ、バイト先でもいつも一生懸命な姿で愛される、いわば犬系女子だ。正反対のふたりだけど、相性はばっちり。グイグイくる凛をさくっと拒絶したいのに、受け流しきれず翻弄される橘くんはかわいい上にコミカル。本当のクラスメイトのやり取りを見ているようで読みながらクスっと笑ってしまう。


実はそれこそがアニメ化もされた過去作『会長はメイド様!』(白泉社)にも共通する著者・藤原ヒロ氏の魅力のひとつ。お互いにときめいている上に、周りが笑ってしまう抜群のコンビ感もあり、さらにお互いのピンチの時は手を差し伸べることができるほど、お互いを理解している。そんな「このふたりにはこのふたりしかいないんだ」と読者に思わせる主人公カップルの唯一無二感が1巻を読んだだけで既に伝わってくる。
今後が気になる伏線がたくさん
「私が守れる範囲の命はぜんぶ面倒見る」と橘くんに啖呵を切る凛。そのかなりの面倒見の良さの理由は、凛が早くに母を亡くし、父も去年亡くなったからだということが読み進めるとわかってくる。命の儚さを痛感する凛だからこそ、猫アレルギーでも野良猫の世話を欠かさないし、猫になり行き場をなくした橘くんを放っておけないのだ。



一方、橘くんにも何やら背景がある様子。橘くんは老舗製菓会社の御曹司だが、凛が家族の話を向けるといつもなんとなくスルー。家族との間に何かありそうな空気が伝わってくる。猫になった理由も、神社にあった鏡のようなご神体の力によるもの、ということしかわからず。もちろん元に戻る方法も不明だ。
さらに後半には凛が猫アレルギーを発症してしまう男性も登場する。彼の存在が橘くん猫化解決のカギになるのか? 今後が気になる、注目のラブコメディだ。
文=原智香