メジロとヤモリの軽快な関西弁トークが炸裂。草むらから世界を語る2匹、可愛い見た目と毒舌のギャップがすごい!『めじとやも』【書評】
公開日:2025/10/16

『めじとやも』(しけたいぬ/KADOKAWA)は、メジロとヤモリが主役のコメディ漫画。2匹の掛け合いはまるで漫才のような軽快さがあり、テンポの良い関西弁のやりとりに思わず笑みがこぼれてしまう。
可愛らしい絵柄と、ちょっぴりシュールなセリフ回しが合わさって、不思議な魅力を放つ作品である。
田舎町に暮らすメジロのメジとヤモリのヤモは、身近な世界に潜む「不思議」をネタに、今日も飽きることなく語り合う。
博識で冷静なメジと、直感的なユーモアを炸裂させるヤモ。正反対のようでいて噛み合う2匹のトークは絶妙だ。人間やネコの行動に首をかしげたり、そんな彼らの物まねをしてみたり、いざ本人たちが目の前に現れるやいなや慌てて逃げだしてしまったり。その無邪気な姿に引き込まれてしまう。
「人間はキショキショ縦長生物」
「ネコは殺戮毛玉」
小さな生き物ならではの感覚から生まれたセンスあふれる名づけに、思わずクスッと笑ってしまうだろう。その一方で、2匹の見た目はあくまで愛らしい。ふっくらとしたフォルムのメジと、うるうるとした瞳が特徴的なヤモが、小さな身体を使って人間やネコの物まねをする姿は可笑しくも微笑ましいのだ。
ゆるく癒やされる空気感の中に、時おり自然界の厳しさが顔をのぞかせるのも本作の持ち味だ。
捕食される側の小さな命の彼らだからこそ持ちえる緊張感と、そこから生まれるユーモラスな言葉たち。愛らしさとシュールさが同居する独特の世界観は、他ではなかなか味わえない。
さらに、地域猫や保護猫活動に触れるエピソードもあり、作者の深い動物愛も感じられる。
メジとヤモだけでなく、カラスやネコなど他の生き物の目線から語られる回もあり「動物が人間をどう見ているか」を想像できるのも面白い。動物たちのユーモアたっぷりな会話に笑い、ちょっとした言葉にハッとさせられる。
本作は、ほのぼのコメディという枠にとどまらず、私たちが生きる世界を新しい角度から映し出してくれている。本を閉じる頃には、普段見慣れた景色も少し違って見えるかもしれない。
文=ネゴト / fumi