骨折してるっぽいけど言えない。放射線技師の“あるある”をコミカルに描く『ギャル技師ちゃん』【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/10/16

 診療放射線技師として病院に勤めるアラサー女子を描いた『ギャル技師ちゃん』は、彼女の日常をユーモラスに描くお仕事コメディだ。

 医師免許を持たない放射線技師は、画像所見の診断を行うことはできない。しかし、毎日レントゲンを撮影していると「折れてるな……」と確信する場面も。

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 立場上、患部の状態をはっきり伝えることは許されない。けれど、骨折しているかどうか気が気でない患者さんに、どうか待ち時間は安静にしていてもらいたい。悩んだ末に彼女がとった意外な行動ははたして――。

 医療現場のリアルな空気感と味のある独特の絵柄が印象的な本作は、X(旧Twitter)を中心に人気が高まっており、11万以上のいいねが集まる投稿も。

 本作をはじめ、医療現場のあるあるを題材にした漫画を多く投稿している作者・からばく社(@100nichigonoRT)さんに、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。

放射線技師の日常を、医療業界以外の人にもわかりやすく描きたかった

ーー『ギャル技師ちゃん』を描こうと思ったきっかけや理由を教えてください。

 創作のきっかけは、ギャルが元気に(時にはだるそうに)働く話が描きたいと思ったことです。ギャルを選んだ理由は、自分自身がギャル好きだからという1点に尽きます。

ーーこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントはどこですか。

 こだわっているのは、ひたすら放射線技師の日常を描く、という点ですね。よくも悪くもかなりリアルな技師の日常の話がメインなので、必ず同業者から「あるある……」「うちの職場もそうだ……」みたいなコメントがつく内容になっています。

 ただ、内容があまりに専門的すぎると他の読者を置いてけぼりにしてしまうので、医療業界以外の人にもわかりやすい描写にするよう工夫しています。

ーー主人公の「ギャル技師ちゃん」について、医療職×ギャルというミスマッチ感が新鮮で魅力的でした。主人公のキャラクターに関するこだわりを教えてください。

 ギャルのディティールに特にこだわっています。

 SNSなどでよく見かける、いわゆる「オタクに優しいギャル像」があまり好みではないので、その辺の喫煙所にいそうなリアルな雰囲気を意識して描いています。ギャルはオタクに厳しいくらいがちょうど良いと思っています。

ーー本作のほかにも『100日後に吸着事故を起こす放射線技師』や『今日も患者様はお元気です』など多くの作品を描かれていますが、医療をテーマとする作品ならではの創作の難しさや葛藤はありましたか?

 仕事をしている時の愚痴を漫画に落とし込んでいるので、あまりネタ探しには苦労したことないです。

 ただ患者さんを巻き込んでネタにする際には、コンプライアンスを意識して創作するよう心がけています。あと、死や病気を茶化す表現も避けるようにしています。

ーー医療従事者の方からの共感の声も多いかと思います。読者から寄せられた感想の中で、特に印象に残っているコメントやエピソードを教えてください。

 漫画の投稿についた引用コメントや返信は全て読ませてもらっています。同業者からの共感の声も多数届いていますが、一方で、医療と全く関係のない読者からも、ありがたいことにたくさんのコメントをいただいています。

 例えば、「今日病院でMRI受けるとき、ギャル技師の漫画のこと思い出した」と普段何気なく受けている検査の裏側を意識してもらえたり、「担当の技師さんがギャルだった」など目撃情報のコメントもあったりして、非常に興味深かったです。

ーーご自身も、診療放射線技師としてのお仕事に加えて、イラストや漫画などの創作活動もされており、お忙しい毎日を過ごされているかと思います。 気分転換のためにされていることなどはありますか?

 定期的にスーパー銭湯の寝転び湯で空を眺めたり、パチンコを打ちに行ったりして、何も考えない時間を作って脳をリフレッシュさせるようにしています。

ーー今後の展望や目標を教えてください。

 この作品をきっかけに放射線技師というニッチな世界の日常をのぞいてもらって、少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいな、と思います。

 もっと色んな人に漫画が届くようにさまざまな形で発信していきたいと思います。

ーー作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

 普段から『ギャル技師ちゃん』を読んでくださっている方も、たまに読んでくださっている方も、いつもありがとうございます。

 これからもゆるく殺伐とした放射線技師の日常をお楽しみください。

取材・文=ネゴト / 糸野旬

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