「描くことで過去を消化できた」重度のアルコール依存症の祖母と暮らした、壮絶な日々を描いた理由【著者インタビュー】
公開日:2025/10/22

「毒親」、「毒家族」。「毒」としか思えないような親や家族から、一体どうすれば自由になれるだろうか。そのヒントとなるのが、壮絶な実体験を描いたコミックエッセイ『さよなら毒家族 アルコール依存症の祖母の呪縛から解放されて私を取り戻すまで』(ゆめの/KADOKAWA)。
著者のゆめのさんは、4歳の時に父親が蒸発、母親を自殺で亡くし、母方の祖父母に引き取られた。平穏な日々が訪れるかと思いきや、祖母は重度のアルコール依存症だった。「普通の家族」を夢見ながらも、ゆめのさんは小学生の頃には“ヤングケアラー”となり、暴言を吐く祖母と、世間体を気にする祖父に苦しめられることになる。
「自分のせいで祖母は壊れたのか」と葛藤しつつも、現在の夫との出会いをきっかけに、ゆめのさんは「おかしいのは自分ではない」と気がつき、自分自身を取り戻していった。彼女はどのように幼少期を過ごし、今、家族にどんな思いを抱いているのか——。お話を伺った。
※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。
——本書ではゆめのさんの壮絶な過去が綴られています。そんなご自身の経験をコミックエッセイとして描き出すことは、とても大きな決断だったと思います。この作品を世に出そうと思ったきっかけや動機は何だったのでしょうか。
ゆめのさん(以下、ゆめの):祖父母のところにいて辛かった頃から「いつかこの経験を必ず本にしてこの世に残したい」「この経験を世間に知ってほしい」と思っていました。そう思うことでどうにか心を保っていたような気がします。祖父母のもとを離れ、ブログでエッセイを描くようになり、今がその時だろうと思い、筆をとりました。
——本書でも描かれていますが、執筆を通じて変化したご自身の心境の変化について教えてください。
ゆめの:自分の過去を順番に描くにつれて、辛かったことがひとつずつ消化できてしっかり「過去の出来事」にできたような気がしています。本の刊行から時間が経った現在は、より「過去の出来事」だと思えるようになり、辛いことを思い出すことが格段に減りました。
——読者から寄せられた反響の中で、最も印象に残った言葉を教えてください。
ゆめの:同じように毒親に苦しんだ経験のある方から「今のゆめのさんが幸せでありますように、無理をしないでください」「今が幸せそうで良かったです」と言ってもらえたことがとても印象的です。ご自身も辛いはずなのに、私のことを思って優しい言葉をかけてくださったことが本当に嬉しかったです。
取材・文=アサトーミナミ