地獄を見た幼少期——母が包丁を振り回した夜、母の自殺、アルコールで祖母が変貌する恐怖【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/10/23

「毒親」、「毒家族」。「毒」としか思えないような親や家族から、一体どうすれば自由になれるだろうか。そのヒントとなるのが、壮絶な実体験を描いたコミックエッセイ『さよなら毒家族 アルコール依存症の祖母の呪縛から解放されて私を取り戻すまで』(ゆめの/KADOKAWA)。

 著者のゆめのさんは、4歳の時に父親が蒸発、母親を自殺で亡くし、母方の祖父母に引き取られた。平穏な日々が訪れるかと思いきや、祖母は重度のアルコール依存症だった。「普通の家族」を夢見ながらも、ゆめのさんは小学生の頃には“ヤングケアラー”となり、暴言を吐く祖母と、世間体を気にする祖父に苦しめられることになる。

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「自分のせいで祖母は壊れたのか」と葛藤しつつも、現在の夫との出会いをきっかけに、ゆめのさんは「おかしいのは自分ではない」と気がつき、自分自身を取り戻していった。彼女はどのように幼少期を過ごし、今、家族にどんな思いを抱いているのか——。お話を伺った。

※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

——ゆめのさんのご両親は幼い頃から不仲でした。本書の冒頭では、ゆめのさんが4歳の時に目撃した、ご両親の激しい夫婦喧嘩の様子が描かれています。口論の末、ついにはお母さまが包丁まで取り出す様子にはハラハラさせられてしまいます。当時は相当怖い思いをされたのではないでしょうか。

ゆめのさん(以下、ゆめの):当時は4歳でしたが、大人になった今でも、そのシーンが頭にしっかりと残っているくらい強烈な出来事でした。とにかく怖くて「父親に死んでほしくない」「母親に怒るのをやめてほしい」とぐちゃぐちゃな気持ちで喧嘩を見ていました。母親が包丁を振り回して父親を追いかけていたときは、子どもながらに「どうやったら父親が死なないで済むか」と考えて、父親に逃げるべき方向を必死に叫んで知らせていました。

——それからほどなくしてゆめのさんは、お母さまを亡くされます。そして、お父さまと離れて、おじいさま・おばあさまの家へと引き取られることになりました。この突然の環境の変化について、当時はどのように思われたのでしょうか。

ゆめの:元々「おばあちゃんっ子」だったのもあり、祖父母の家で暮らせると知ったときは本当に嬉しかったです。父母との思い出は少なく、父母への良い感情があまりなかったため、祖父母の家に行くことはすんなりと受け入れられました。

——本書の冒頭を読むと、おばあさまはとても優しく、温かい印象です。だからこそ、その後の豹変には衝撃を受けてしまいました。おばあさまはゆめのさんが生まれる前から重度のアルコール依存症で、我を忘れるほど飲酒した後は数日寝たきりになってしまったとのこと。おばあさまが泥酔する様子を初めて目の当たりにしたとき、ゆめのさんはどのような気持ちになったのでしょうか。

ゆめの:当時はまだ幼く、「酔っぱらう」ということをよく知らなかったので、祖母が泥酔し寝込むのを見ても、うまく理解ができませんでした。ただ、優しい祖母が泥酔し豹変するさまが「普通」ではないなというのは分かっていたので、それが怖かったし、とにかく悲しかったです。

取材・文=アサトーミナミ

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