“ヤングケアラー”だから、諦めた夢……それでも「大人になれば解放される」と信じ続けた壮絶な日々【著者インタビュー】
公開日:2025/10/26

「毒親」、「毒家族」。「毒」としか思えないような親や家族から、一体どうすれば自由になれるだろうか。そのヒントとなるのが、壮絶な実体験を描いたコミックエッセイ『さよなら毒家族 アルコール依存症の祖母の呪縛から解放されて私を取り戻すまで』(ゆめの/KADOKAWA)。
著者のゆめのさんは、4歳の時に父親が蒸発、母親を自殺で亡くし、母方の祖父母に引き取られた。平穏な日々が訪れるかと思いきや、祖母は重度のアルコール依存症だった。「普通の家族」を夢見ながらも、ゆめのさんは小学生の頃には“ヤングケアラー”となり、暴言を吐く祖母と、世間体を気にする祖父に苦しめられることになる。
「自分のせいで祖母は壊れたのか」と葛藤しつつも、現在の夫との出会いをきっかけに、ゆめのさんは「おかしいのは自分ではない」と気がつき、自分自身を取り戻していった。彼女はどのように幼少期を過ごし、今、家族にどんな思いを抱いているのか——。お話を伺った。
※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。
——ゆめのさんは、小学生の頃から重度のアルコール依存症だったおばあさまのお世話で、“ヤングケアラー”として壮絶な日々を過ごされました。そして専門学校に進むと、今度はおじいさまがガンになり、ゆめのさんは学校を辞める、夢を諦めるという苦渋の決断を迫られました。当時の状況を教えてください。
ゆめのさん(以下、ゆめの):当時は祖母との関係も落ち着いていて、学校に通うのも楽しく、やっとまともな生活が送れていた時期でした。ですから、祖父がガンになったとき、「私はまだ苦しまなきゃいけないのだな」と、どん底に落ちたような気持ちでした。友人からも夢を諦めることを非難され、「事情を知らないのに言わないでほしい」と辛くてたまりませんでした。
——学生時代、先生や親戚など、家庭の事情を知る周囲の大人やご友人はいましたか? おばあさまがアルコール依存症であることは誰にも言えない状況だったのでしょうか。本書を読んでいると、「誰かがゆめのさんの心の支えになってくれれば」と強く思ってしまいます。
ゆめの:近い親戚や父親は祖母のアルコール依存症を知っていました。それでもみんな「何もしない、何もできない」という状況でした。世間体を守らねばという意識もあったと思います。
——本書を読んでいると、「世間体」を強く意識されていたのは、おじいさまとおばあさまも同じだったように感じます。「世間体」ばかりを気にする2人に対して、ゆめのさんはどのように感じていたのでしょうか。
ゆめの:当時はその世間体を、私も同じように強く意識して守らねばと思っていました。大人になった今も世間体が気になって行動がしづらいときも多いのですが、自分の気持ちや、やりたいことを優先するように心掛けています。
——過酷な家庭環境の中でも、何とか自分を保つために夢中になっていたことや心の拠り所はありましたか。当時の精神的なセルフケアやバランスの取り方についても教えてください。
ゆめの:自分の心を守るためにどうしたらいいかが分からなかったので、とにかく「大人になるまで頑張って生きよう、大人になれば必ず解放される」と思い続けていました。それだけを励みにして生きていました。
取材・文=アサトーミナミ
