「先日助けていただいた鶴です」女性に化けず鶴のままやってきた白昼堂々版「鶴の恩返し」。果たしてその目的は?【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/10/16

食費がめちゃくちゃ浮くと思って川を流れる桃を拾ってきたお婆さん。「ばあさんのそういうところ好きだなあ」とのろけにも捉えかねないワンシーンが描かれています。かと思うと、「そいや!」と手刀で一発、桃をぶち割ったお婆さん。中には丸裸の赤子がおり、臍の緒もなく、どうやら桃を齧りながら食いつないできたことが窺えます。その後の名前のつけかたの妙に考えさせられる4コマ漫画でした。

親の顔よりも見ている「桃太郎」ですが、どうも昔話には、「子宝に恵まれない老夫婦が祈って、何かしらの形で子どもに恵まれる」という話が多いような気がします。桃から赤子が生まれるというサイコパスなアイデアが、作者不詳で何となく日本中で広まり、今も受け継がれていることに恐怖すら覚えます。
雪のヤドカリさんが当時の語り部になれるとしたら、どんなヤバイ話を広めたいと思いますか?

(雪のヤドカリさんは神妙な面持ちでこう語った…)

昔々小さな島に鬼たちが暮らしていました。
ある日島にぼろぼろの木箱が流れ着きました。
箱をあけると中には人間の赤ん坊が眠っていました。

放っておくわけにもいかないので、鬼たちはその赤ん坊を育てることにしました。
みんなでかわるがわるご飯を作ったり、おしめを取り替えたりして、赤ん坊はすくすくと育ちます。

ある日青鬼はその子に言葉を教えました。
人間の世界で生きていけるように。
ある日黄鬼はその子に友達の作り方を教えました。
人間の世界で楽しく過ごせるように。
ある日赤鬼はその子に剣の振り方を教えました。
人間の世界で活躍できるように。

赤ん坊がすっかり大きくなったころ、鬼たちはその子に、島を出て人間の世界で生きるよう言いました。
ですがその子は島に残ると言ってききません。

鬼たちは困ってしまいました。
島の空気も食べ物も、本当は人間の体には合いません。
人間の世界に行った方がきっと幸せになれるのに。

鬼たちは相談して、鬼のまじないでその子を赤ん坊のころに戻しました。
島でとれた一番きれいな桃にその子を入れて、人間たちの住む里山に登って、きれいな川に流しました。
はじめから、人間の世界で生きていけるように。

<第37回に続く>

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