【葵わかな&神尾楓珠W主演でドラマ化】「30秒で泣ける」超短編小説、待望のコミカライズ【書評】

マンガ

公開日:2025/10/17

すべての恋が終わるとしても
すべての恋が終わるとしても(胡月:コミック、冬野夜空:原作/スターツ出版)

 140字で綴られた恋の物語はどのように映像化されるのだろうか。10月12日からスタートした新ドラマ「すべての恋が終わるとしても」(毎週日曜よる10:15~、ABCテレビ・テレビ朝日系全国ネット)は、そんな興味をかきたてる注目作だ。主演は葵わかな&神尾楓珠。脚本は「Eye Love You」(2024年、TBS)や映画「顔だけじゃ好きになりません」(2025年)などの三浦希紗氏。その原作は、中高生を中心に「30秒で泣ける」と絶大な支持を受け、シリーズ累計発行部数60万部を突破した140字の超短編恋愛小説集『すべての恋が終わるとしても』(冬野夜空/スターツ出版)だ。

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 ドラマでは、原作シリーズ全3巻に収録されている146のエピソードから、8つのエピソードを厳選。原作の持つ儚い世界観と共感性はそのままに、登場人物たちの葛藤や成長が丁寧に描かれるという。一体、どのような恋愛模様が描かれるのだろう。わずか140字に詰め込まれた“恋の瞬間”が、映像の力でどう息づくのか。今多くのファンが期待を寄せている。

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 そんなドラマにあわせて読みたいのが、原作本から選りすぐりのエピソードをコミカライズした『すべての恋が終わるとしても』(胡月:コミック、冬野夜空:原作/スターツ出版)だ。原作同様、この本には「30秒で泣ける」ショートストーリーが満載。しかも、胡月氏が繊細なタッチで描く恋の情景は、ページをめくるたび胸を締めつける。「30秒で泣ける」というキャッチコピーはそのままに、それがコミック化されることで、物語はより深く、鮮やかに心へと届くのだ。

 友達以上恋人未満の、近くなりすぎた関係。終電を逃した夜の出会い。十年来の男友達に感じた胸のときめき。通話で寝落ちした男友達に告げた「好きだよ」の一言。付き合い始めてから広がってばかりの彼との距離。ただ好きなだけなのに、告げられた別れの言葉——この本には始まりから終わりまであらゆる恋が描かれている。それらは甘酸っぱくもあり、ほろ苦くもある。どのエピソードも、恋をしたことがある人なら思わず「わかる」と頷いてしまうような、等身大の感情が描かれている。

 昔の恋を思い出して「あの人は今何をしているのだろう」と思いを馳せてしまう人もいるだろう。はたまたドラマチックな展開につい「こんなセリフ言われてみたい」と憧れを感じてしまう人もいるに違いない。ここには恋の喜びも悲しみもギュッと詰め込まれている。読むほどに、自分にとっての“忘れられない恋”を思い返さずにはいられない。

 すべての恋が終わるとしても、あの恋だけは特別だと信じたかった。一生忘れられない、たったひとつの恋。そんな恋の経験がよみがえってくる。まだないという人も、きっとこれからそんな恋と出会えるはず。この本には、誰かにとってのそんな宝物のような恋が集められている。本を開けば、たった30秒でいつでもどこでも切ない気分に浸れる。原作を読んだ人も、この本で初めて”すべ恋”の世界に触れるという人も、胸キュン必至。とってもリアルで少しほろ苦い恋の断片には心揺さぶられるはず。この秋、ドラマとともに読みたい、じんわりと心に染み渡る1冊だ。

文=アサトーミナミ

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