魔人の世界を放浪するサムライと、彼を保護したい魔獣。『ニンゲンの飼い方』最新刊では追いつ追われつのサバイバル劇が開幕【書評】

マンガ

公開日:2025/10/24

 どれだけ交流を重ねた相手とも、100%は分かり合えないのが人間のさがである。そんな、同族同士でも難しい意思疎通を、異種族同士で行おうとしたら一体どうなるのか。

ニンゲンの飼い方』(ぴえ太/KADOKAWA)は、異世界に迷い込んだ青年を、巨大な魔人・トゥイミナが保護することから始まる日常漫画だ。

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 飼い主・トゥイミナとペットになる青年は、物の見え方・感じ方がまったく異なる。そもそも体格差があるふたりだ。トゥイミナが優しさから手を差し伸べても、青年にとっては恐怖でしかない。トゥイミナからしても、言語が通じず、この世界の食べ物も口にしない弱々しい「ニンゲン」にどう接していいのか測りかねてしまう。

 唯一、神の視点でキャラクターの気持ちを把握できている存在が読者だ。ページをめくりながら、ふたりのすれ違いに気をもむことになるだろう。その分、青年がトゥイミナの優しさに気付き、恐怖心が少しずつやわらいでいく様子をより一層楽しめるはずだ。

 とくに、トゥイミナが青年を安心させるために、生まれつき指に生えているトゲを切り落とすシーンには、心を掴まれる人が多いのではないだろうか。

 まるで、いつもきれいにネイルをほどこしていた女性が、すべてを拭いとるような……。大切なペットを安心させるために、これまでの自分を失うことを選ぶ覚悟が、実に衝撃的である。

 さらに、最新刊となる『新!ニンゲンの飼い方』では、これまでのシリーズにはなかった要素が加わる。魔人に保護されなかった人間が、危険と隣合わせの異世界でサバイバル生活をくり広げるのだ。

 異世界は、弱いものはエサになる過酷な環境。新たに登場するニンゲン・ブシは、武器や友好的な生物の力を借りて、その苦境に抗う。さらに、彼を助けようと行動する魔獣・フフも登場して、追いつ追われつのハラハラ感を読者に味わわせてくれる。

 一方で、おなじみのキャラクターたちによる平和な日常ももちろん描かれている。トゥイミナと穏やかに過ごすようになった青年は、異世界の暮らしや飼い主たちにどこまで慣れ親しんだのだろうか。

 1巻と最新刊の彼らを見比べてみるのも、楽しいかもしれない。

文=ネゴト / ぬいたろ~

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