短く、ゆるく、クセになる!3コマで描く“わざわざ話すほどでもない”日常【漫画家インタビュー】
公開日:2025/10/28

絶妙な「間」を駆使して日常の小さな出来事を切り取った3コマ漫画は、不思議と何度も読み返してしまう独特の魅力がある。
登場するのはウサギやニワトリ、ヒヨコといった動物のほか、食べ物や浮き輪など。次々と現れる可愛らしいキャラクターと彼らのゆるい表情がクセになる作品だ。
X(旧Twitter)では毎日1作品を投稿しており、10万以上の「いいね」を獲得することも。
そんな3コマ漫画の作者・しらす中納言(@SirasuMiddle)さんに、創作のきっかけやこだわりについて聞いた。
余白と間に笑いと共感。3コマ漫画に込めたこだわり
ーー3コマ漫画を創作したきっかけや理由を教えてください。
短い漫画といえば4コマ漫画が主流ですが、「これ、もっと減らせるかも?」と思い、今の3コマスタイルに落ち着きました。2コマの即オチ方式も試しましたが、しっくりきませんでした。
コマ割り漫画を作成していた時期もあったのですが、制作時間の都合でなかなか更新頻度を上げられなかったため、サクッと描けるスタイルを模索していった結果です。
ーー描くうえでこだわっている点や、「ここを見てほしい」というポイントはどこですか?
想像の余地を残す余白や、セリフのないコマの「間」を楽しんでほしいなと思っています。
また、裏テーマとして、キャラクターの表情を変えずに感情表現するにはどうすればいいのかをこっそり研究しています。
ーー特に気に入っているお話を教えてください。
あんまり人気はありませんが、『ヤギさん郵便』が気に入っています。間を置いた後の追撃と、ゆるい動物が生々しい単語を口走るギャップが好きです。

ーー3コマでクスッと笑えるオチがとても魅力的ですが、短い中でテンポよく落とすために意識されていることはなんですか?
可能な限り、セリフやムダな情報を削ることを心がけています。
SNS上での漫画活動は、どんどん流れてくる情報の中でいかに目に留めてもらえるか勝負な部分があり、最後まで読み切ってもらえるためのハードルを限界まで下げる必要があると考えています。その意識が、短くテンポ良くまとめることにつながっているのだと思います。
ーーゆるくて可愛いキャラクターがたくさん登場しますが、どのように思いついているのですか?
見た目で設定説明がつくようなものをチョイスすることが多いです。
日常ネタなら自分のアバターとして「うさぎ」、家族や親子ネタなら「ニワトリとヒヨコ」、勉強や科学ネタなら「メガネ」、といったように、パッと見て前提条件や世界観がわかるベタな記号を使い、そこから描きやすさや見分けやすさを考えてアレンジしています。
ーー3コマ漫画を通じて描きたいこと、伝えたいことはどんなことですか。
共感性でしょうか。「トーストを焼きすぎて消し炭になった」「飲料水を玄関前置き配で頼んだら、ドア前に置かれて家から出られない」など、わざわざ誰かに連絡してまで話すほどでもない、日常のちょっとした面白いエピソードってみんなあると思います。
その面白みをうまく言語化して漫画に落とし込むことで、笑ってもらったり仲間がいると思ってもらったりして、読んでくれた方の楽しい時間につながればいいなと思っています。
ーー今後描いてみたいお話やテーマはありますか。
大人の学び直しのススメ的なものに取り組みたいです。仕事の資格試験の勉強中に高校数学の知識が登場する単元があったので、なんとなく書店で高校数学の参考書を見てみたら、すごく面白かったんですよね。「あっ、これこういうことだったんだ」と。
学生時代と違って成績を気にせず触れられると、概念としての面白みを知ることができ、過去の自分の勉強の仕方を振り返る気づきもあります。大人になってからこその発見を、漫画として発信してみたいです。
ーー今後の展望や目標を教えてください。
漫画以外の活動にも挑戦してみたいので、とりあえずはLINEスタンプあたりですね。あとはシンプルで的確な表現ができるよう、ワードセンスを磨いていきたいです。
ーー作品を楽しみにしている読者の方々へメッセージをお願いします。
人生の貴重な時間を割いて読んでくださり、ありがとうございます。今後ともご無理のない範囲でよろしくお願いいたします。
取材・文=ネゴト / fumi
