35歳年下のアイドルに恋をした! 孤独で何もなかった人生に「推し」が光をもたらし、どんどん世界を広げていく女性の物語【書評】
公開日:2025/10/29

『ハルコの恋 55歳の私が35歳年下のアイドルを好きになったらダメですか?』(久保マシン/KADOKAWA)は、推しを見つけたことで人生が輝き出した女性の物語。特に推しがいる人は深く共感できる作品だろう。
主人公のハルコは55歳の独身女性。親の離婚、母の病、介護、高校中退.....彼女は自分を犠牲にして生きてきたためおしゃれや恋などを楽しむ暇がなく、スーパーでパートをしながらこれまで淡々と生きてきた。そんなある日、たまたまテレビで見た20歳の男性アイドル・愛賀光(あいがひかる)に一目惚れし、ハルコの世界は一変する。
推しができたことで、雑誌を買ったりイベントに行ったりと外出の機会が増え、さらに料理やおしゃれもするように。職場での人間関係も広がった。誰かを好きになるという気持ちが灰色だった彼女の毎日に彩りを与え、もはや失ったと思われた青春を謳歌する感情を呼び覚ます。彼女が内側から明るく変わっていく様子はとても眩しく、エールを送りたくなるはずだ。
当初、35歳も下のアイドルを推していることを気にして、ハルコは密かに推し活をするが、この葛藤や後ろめたさに似た気持ちには共感できる人も多いだろう。だが同じアイドルを推す女子高生との出会いをきっかけに、彼女はだんだんと推し活を公言していく。自分の好きなことや本音を伝えることで、彼女の世界はさらに広がっていく。年齢も立場も違う人たちが好きなものを通して心を通わせる様子は、趣味や推し活が生み出す温かさや尊さを感じられる。ハルコの前に時折現れる、光にそっくりな謎の美男子との関係からも目を離せない。
心から好きと思う気持ちは自分を大きく変えてくれるし、強くしてくれる。そこには年齢も性別も関係ないのだ。ハルコの生活はどう変わっていくのか。推しに恋をして自分を取り戻していく物語に、きっとあなたは勇気をもらえるはずだ。
文=ネゴト / fumi
