「あの人みたいに上手くできない」子育て中の母親3人が抱く悩みに共感多数! 不安と葛藤の果て、それぞれが見つけ出した幸せの形【書評】
公開日:2025/10/31

『ほかの子と、ほかの親と、比べてしまう自分をやめたい』(むぴー/KADOKAWA)。このタイトルを聞いて、思わずドキッとした人は多いのではないだろうか。本作は子育てに向き合う母親が抱える悩みを等身大で描いた作品である。
子育て世代が多いベッドタウン・あさひが丘に暮らす3人の母親たち。2歳の息子を育てるワーキングマザーのちさとは、子どもの発育に不安を抱える。専業主婦のみさは、社会とのつながりの薄さに焦りを感じる。フリーランスで働くゆかりは、内向的な性格ゆえにママ友の輪に入れず悩む。三者三様の環境と心の葛藤が描かれていく。
エピソードはどれも身近で、読者の胸に刺さる。外出先で同じ年頃の子と比べてしまい、何かにつけて「自分の子は遅れているのでは」と落ち込む。小さい頃からいい子でいようと努力してきた結果、自分のやりたいことがわからなくなる。よくできる姉と比べてばかりで劣等感を抱く。そんな場面のひとつひとつは、自分事ごとのように苦しくなる人は多いはずだ。
3人は同じ母親でも、生き方も環境も異なる。けれど、どこかで「自分は足りない」と思っている点は共通している。愛する子どもと家族に囲まれて幸せなはずなのに、周りと比べてしまう。例えば、内向的なゆかりは明るいちさとに憧れ、反対にちさとはゆかりの落ち着いた育児に羨ましさを抱く。誰かを羨む気持ちと、つい比べてしまう苦しさが丁寧に描かれている。
他人と自分、理想と現実。比べることをやめたいのに、やめられない。そんな日々の中、3人の母親たちは少しずつ自分なりの幸せを模索していく。夫や子ども、家族との関わりを通して、過去の自分や心の奥にある思いと向き合い、誰とも比べない自分を取り戻していくのだ。母親でありながらもひとりの人間であることの大切さを思い出させてくれる。読後は、自分が持っている幸せとその尊さを再認識するはずだ。
文=ネゴト / fumi






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