撫でられると卵を産んじゃう!? 不思議な生態が愛おしい『唐辛子ドラゴンのシン』【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/10/31

 つぶらな瞳とちょっぴり不機嫌そうな顔が愛らしい小さなドラゴン・シン。イラストレーター・3:59さんによる漫画『唐辛子ドラゴンのシン』では、シンの日常が個性的かつキュートなタッチで描かれている。

 動物園で暮らすシンは、優しい飼育員さんのことが大好き。一緒にボール遊びをしたり、膝枕でお昼寝をしたりと、仲睦まじい日々を過ごしている。

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 しかし、ドラゴンの生態は謎に包まれている。撫でられると興奮して卵を大量に産んでしまったり、時には人間の女性のような姿に変身したりと、不思議な特徴を持っている。

 ファンタジーとユーモアが入り混じる独特の世界観が話題を呼んだ本作は、X(旧Twitter)を中心に人気が高まっており、1万以上のいいねが集まる投稿も。

 作者の3:59(@359_zako)さんに、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。

描きたかったのは、自分の好みを詰め込んだ理想のドラゴン

ーー本作を描こうと思ったきっかけや理由を教えてください。

 シンは元々、別のお話に登場するキャラクターだったのですが、その物語の中だけにとどめておくのではなく、もっと「キャラクター」として愛されてほしいという思いがありました。そうした中で、さまざまな試行錯誤を重ねるうちに本作が生まれました。当初はとても気軽な気持ちで描き始めた作品です。

ーー「唐辛子ドラゴン」とはどういう意味なのでしょうか? また、シンを描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントを教えてください。

「唐辛子ドラゴン」の由来は、キャラクターデザインをするときのモチーフが唐辛子だったからです。「シン」という名前も、唐辛子の辛という字からとっています。

 こだわっているポイントは、 シンのしぐさや表情です。漫画の中で主題に関係ない部分でもいろいろな動きをさせたり、激しく暴れていたりする姿を描くのが好きなので、そういった部分に特に思い入れがあります。あとは鼻息が荒かったり、おしりが少し臭かったりするところに生き物らしいリアリティを感じていただけると嬉しいです。

ーー無精卵をたくさん産んだり、時には人間の女性のような姿に変身(?)したりするドラゴンの不思議な生態が印象的でした。参考にされた作品などはありますか?

 本作では、「強そう」「超越的存在」「卵生」といったドラゴンに対する一般的なイメージの中から自分が特に好きな要素を誇張して、自分好みに描いています。

 いろいろな部分で影響を受けているのは、『BEASTARS』(板垣巴留/秋田書店)という漫画のエピソードです。鶏の女の子が朝産んだ無精卵を売ってお金を稼いでいて、その卵でできたサンドイッチを主人公が食べていて気まずくなる……というお話があるのですが、それを読んだ際に、「卵は中に生命が宿っているどうかで扱われ方がかなり違うのが面白い」と感じました。どちらもおしりから出てくることに変わりはないのに! とハッとした記憶があります。

 他に参考にしているのは、Xで流れてくる動物の動画や写真ポストでしょうか。人間が被写体であれば絶対にインターネットに載せてはいけないような身体の部位が、動物の場合は無慈悲にもアップで撮られていたりして、思わず笑ってしまいます。また、動物側も手の上で可愛がられている最中に、予告もなく排泄して飼い主の手を汚してしまうことがあったりしますが、飼い主はそれすらも「可愛い」と受け止めていたり――。そんな構図が、どうしようもないけどハッピーな世界観だなと思えて好きです。

ーー飼育員さんを慕っているシンの姿に癒やされます。シンと飼育員さんの関係を描くうえで、大切にしているポイントはありますか?

 意識していることは、 いろいろとやりすぎないことでしょうか。作品をXで公開している以上、Xで評価されやすいものを描いてしまいがちなのですが、描写が過激になりすぎないように、なるべく優しくほっこりする作品にできたらいいなと思いながら描いています。シンと飼育員の関係も、おおむねそんな感じです。

ーー2025年8月にクラウドファンディングでシンのぬいぐるみ化に挑戦し、みごと成功されています。ファンの皆さんの感想はいかがでしたか?

 皆さんからはとても好評いただきました! 目標額に到達しなかったらどうしようととても心配だったのですが、予想外に「可愛い!」「お迎えが楽しみ」などと言っていただけて、心の底から安堵しました。お家にやってきてからも可愛がっていただけると嬉しいです。

ーー今後描いてみたいエピソードはありますか?

 シンにさまざまな季節の行事を体験させたいです。秋には紅葉を見たり、冬は雪だるまを作ったり……きっと楽しいと思います。

 あとは、ドラゴンリンガルというシンの言葉が翻訳される機械が登場して、シンが喋ってる言葉の意味がわかるのか!? わからないのか!? みたいな話も描きたいです。

ーー今後の展望や目標を教えてください。

 夢のまた夢のような話ですが、いつかシンがガチャガチャの商品になったらいいなと思っています。そして、作品を知らない方にも気軽に回してもらって、机の上などに飾ってもらえたらとても嬉しいです。

ーー作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

 いつも読んでくださりありがとうございます。皆様に読んでいただけるおかげで創作活動が楽しく続けられています!

 これからも末長くシンを愛していただけますよう頑張りますので、温かく見守っていただけますと幸いです。

取材・文=ネゴト / 糸野旬

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