痩せたいけど食べたい!脂産家ネコに学ぶ痩せられない自分を丸ごと愛すヒント【書評】

マンガ

公開日:2025/11/12

 一度でもダイエットに苦しんだことのある人、なかなか思うように痩せられず自己嫌悪に陥った人にこそ手に取ってほしいのが『ダイエットは痩せられないが9割』(コオリヤマ/主婦と生活社)。タイトルからして「わかる!」と声を上げたくなる人も多いのではないだろうか。X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSで発表されるたびに、多くの共感と笑いを呼んできた話題作だ。全編描き下ろしでまとめられた一冊は、満足感もたっぷりだ。

 物語の主役は、資産家ならぬ“脂産家ネコ”。そのぽってりとしたシルエットがなんとも愛らしい。彼の語る言葉は「カラダは重い 財布は軽い」「体重計 壊れた日々は 心おだやか」など、思わずニヤリとしてしまうような言葉ばかり。食べたいけど痩せたい——その矛盾と葛藤を、シンプルかつユーモアあふれる川柳やひと言で切り取っていく。

advertisement

 ダイエットとは関係のない(ように見える)日常をゆるやかに生きる“脂産家ネコ”は、基本的にご飯は大盛り、おかわりも忘れない。3時のおやつ、夜食に深夜の誘惑……そんな「やっちゃいけない」と思っていることも、おいしそうに、自然にやってのける姿には、ある種の清々しさすらある。読んでいるうちに、こちらの罪悪感もじんわりとゆるんでいく。

 作中に時折差し込まれる「脂産家ネコ氏のぼやき」という作者のエッセイは、どれも思わずうなずきたくなるものばかり。「焼肉でライスを頼まない人の考えがわからない」など、その発言には、食いしん坊ならではのリアルな視点と熱い思いがにじむ。一方でただ笑えるだけでなく、作中の端々から「痩せなくても、生きてるだけで十分えらい」と、そっと肯定してくれるようなやさしさも感じられる。

 近年、SNSなどでは「痩せていること=正義」というような風潮も少なくない。そんな中でこの作品は、無理せず、ありのままの自分でいられること、そして食べることの楽しさを改めて教えてくれる。読むうちに、張り詰めていた心と体の糸がゆるむ。ダイエットに疲れたあなた、ぜひおやつを片手にこの1冊を開いてみてほしい。

文=ネゴト / fumi

あわせて読みたい