天才すぎる柴犬が作ったのは、家族を模したロボット。高知能犬とロボットが紡ぐハートフルコメディ【書評】

マンガ

公開日:2025/11/8

知能が高過ぎる柴犬と柴犬が好き過ぎる少年ロボット』(シパソ/KADOKAWA)は、1匹の柴犬が愛する家族を模したロボットを完成させるという、少し特殊な場面から物語が始まる。

 本作の主人公・シバは、生まれつき知能が高い柴犬。人の言葉を話し、精密な機械まで作ってしまう天才だ。しかしその知能を求める人間から狙われやすいシバは、かつての家族・ソータを傷つけまいと自ら別れを切り出し、離れ離れで暮らしている。

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 シバは寂しさからソータの代わりとなるロボットを完成させる。ソータのようでありながら、ソータ本人とは異なる人格を持つそのロボットは、柴犬が好きすぎて少しドジ。そんなロボットとの出会いから、シバのひっそりとしたひとり暮らしは一気に変化していく――。

 シバはひとり暮らしができるほど自立しており、さまざまな発明品を自作するなど、通常の柴犬とは異なる個性を持つ。しかし、犬である本質は変わらないのか、たびたび犬特有の仕草を見せる。愛くるしい見た目も堪らないが、シバの行動から見え隠れする内面部分にも注目してほしい。

 とくに印象的なのは、かつての家族・ソータに対する愛情表現。別々に暮らしているにもかかわらず、24時間体制で彼に近づく不審者を記録・対処し続ける徹底ぶりである。柴犬に多いといわれる「忠実」な性格が見て取れる一方で、怪しい組織の本拠地を爆破するといった、天才ならではの容赦ない行動にはクスッと笑わされる。

 ソータを見守り続ける一方、未練を払いきれず代わりのロボットを作ったことを、シバはソータ本人に知られたくないという。家族を大切に思い続けながらも、自分の気持ちに素直になれないシバ。その不器用さはどこか人間味があり、表には出さずとも、尻尾や耳の動きに本音がにじむ様子からも、犬らしさが感じられる。

 かつての家族を愛し続けるシバが、身代わりとして作ったロボットとどんな関係を築いていくのか。愛する家族との再会は叶うのか――ひと味違う柴犬の物語を堪能してほしい。

文=ネゴト / mikasa

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