怖がりなのにオカルト好きが踏み入る心霊の世界。キュンとするホラー漫画『黒乃さんはオカルトが好き!』【書評】
公開日:2025/11/16

心霊現象や都市伝説、占いといった非科学的な事柄、いわゆる「オカルト」にひそかに惹かれる人は意外と少なくないものである。表立って語れば怪訝な目を向けられることもあるため、オカルトへの興味や好奇心を胸の内に秘めている人もきっと多いはずだ。もっとも、信じるか信じないかは人それぞれ。その曖昧さと神秘性こそが、オカルトの魅力なのだ。
『黒乃さんはオカルトが好き!』(クサダ/幻冬舎コミックス)は、そんなオカルトをテーマとした異色の青春ラブコメディである。
主人公・悠木は、どこにでもいるごく普通の男子高校生。彼は偶然たどり着いたインターネットの掲示板で、謎の少女・黒乃と出会う。なぜか黒乃に気に入られてしまった悠木は、特に興味がないのにオカルトスポットを探索することに。トイレの花子さん、きさらぎ駅、呪いのビデオ、こっくりさん……。気乗りしないまま、悠木は黒乃とともにさまざまな心霊スポットや都市伝説の現場に足を踏み入れてしまう。しかし、いざ現場に行ってみれば、一番ビクビクしているのは黒乃のほうで――?
本作の見どころは、オカルト好きでありながら、同時に極度の怖がりでもあるヒロイン・黒乃のキャラクター性にある。心霊スポットに足を踏み入れるや否や悲鳴を上げ、怪異の気配に必要以上に怯えながらも、結局は好奇心を抑えきれず突き進んでしまう彼女の姿は、まるで怖いもの見たさを抑えられない子どものようで、何とも微笑ましい。そんな黒乃に引きずられるように同行する悠木も、次第に彼女の人間味あふれる一面に惹かれていく。
オカルトを愛するヒロイン・黒乃と巻き込まれ体質な男子・悠木の関係は、オカルトスポット巡りを通じてこの先どのように変化していくのか。ラブコメ要素とホラー要素が絶妙に組み合わされ、怖さとときめきを同時に味わえるのも、本作の魅力のひとつだろう。笑いと胸キュンが詰まった、唯一無二のオカルト青春劇である。

