真夜中に現れる、ねこしかいない喫茶店とは…? “食べる”ことで心の傷を癒やし、未来へと歩き出すきっかけをねこたちがくれる物語【著者インタビュー】
公開日:2025/11/15

ねこと人間の絆を表現したねこ漫画にはほっこりさせられるもの。中でも、ねこが持つ温かみを柔らかなイラストで巧みに表現し、読者の心を癒やしているのが、漫画家・ねこまき(ミューズワーク)さん。今年10周年を迎えた代表作『ねことじいちゃん』(KADOKAWA)には、妻に先立たれた大吉じいさんと愛猫のタマの穏やかな暮らしが描かれており、目尻が下がります。
そんなねこまきさんが手掛けたのが、「ねこ×グルメ」をテーマにしたねこ漫画『深夜3時のくろねこ喫茶』(スターツ出版)。ねこまきさんの新境地とも言える本作の舞台は、ねこが集い、悩める人間が迷い込むこともある“真夜中限定のくろねこ喫茶”。
かわいらしいねこの姿に癒やされながら、日常の中で感じるモヤモヤを軽くしてくれる本作はどんな経緯で誕生し、ねこまきさんはどんな想いを込めたのでしょうか。
――“真夜中にねこしかいない喫茶店”を舞台にしようと思われたのは、どうしてでしょうか。
ねこまきさん(以下、ねこまき):「ねこ×グルメ」というテーマ設定と同じく、ご依頼元のOZcomics編集部さんからのご提案いただきました。
雑誌『OZmagazine』は、“日常を旅する”という発想を大切にしています。身近なカフェや散歩道の中にも「発見」や「癒やし」があるという考え方が素敵で、“真夜中にねこしかいない喫茶店”という設定を聞いた瞬間、「私が真っ先に迷い込みたい!」と思いました。
その時から、頭の中は「くろねこ喫茶」でいっぱいになりました(笑)。
――『ねことじいちゃん』もそうですが、ねこまきさんの作品は温かみのある柔らかいタッチやストーリー展開が魅力的ですよね。どうやって、そうした作風に辿り着かれたのでしょうか。
ねこまき:実は、『ねことじいちゃん』を描く少し前に、母を亡くしました。だから、同作はどこか、母との思い出を辿るような気持ちで描いていました。
子どもの頃に見た忘れられない景色には、鉛筆や水彩の優しいタッチが合っている気がしましたし、母に読んでもらった絵本はどれも鮮やかな水彩で描かれていました。心に残っている思い出が反映されているのかもしれません。
――今作は『ねことじいちゃん』とはまた違う方向性で、ねこと料理の物語が展開されていきますよね。
ねこまき:そうですね。『ねことじいちゃん』では料理を作ることで亡くなった妻や、過ぎ去った懐かしい日々を思い出す展開でした。
一方、『深夜3時のくろねこ喫茶』では料理を“食べる”ことで心の傷を癒やし、 未来へと歩き出すきっかけをねこたちがくれる物語になっています。
取材・文=古川諭香
